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暗黒物質探索に見えた手がかり〜日経サイエンス2015年8月号より

初の前向きな兆候がとらえられた

 

宇宙には見ることも触れることもできない暗黒物質(ダークマター)があって,他の物体を引き寄せる重力によってのみ,その存在を示している。この謎の物質の正体を探る過去数十年の試みは,暗黒物質が「何ではないか」を明らかにする繰り返しとなり,候補とされた可能性がしだいに除外され,物理学者は不安をつのらせている。最後の候補が否定されたらどうなるのか? 宇宙の全質量の約25%を占める暗黒物質の正体を垣間見ることは決してできない定めなのか?

 

今春,この憂鬱な物語に希望の光が差した。ここ数年で最も興味深い手がかりが見つかったのだ。それは暗黒物質どうしが相互作用することを許す新種の「力」が存在する兆候だ。暗黒物質がどんなタイプの粒子からできているのかを説明するのに寄与するだろう。

 

暗黒物質の動きに遅れ

この手がかりは「エイベル3827銀河団」を観測するなかで見つかった。同銀河団で衝突しつつある4つの銀河にある暗黒物質の位置を,重力レンズ効果(光が大質量天体の近くを通る際に曲げられる現象)をもとに追跡した。ハッブル宇宙望遠鏡とチリにある超大型望遠鏡VLTが行った観測によって,これら銀河の少なくとも1つを取り巻く暗黒物質が,そこにある通常の物質よりも遅れて動いていることがわかった。暗黒物質粒子どうしが相互作用して自らの動きを遅らせていることを示唆しており,初めて見つかった現象だ。

 

英ダラム大学のマッシー(Richard Massey)が率いる天文学者たちは,この相互作用が通常の物質に及んでいないことから,暗黒物質だけに影響する重力以外の何らかの力によって生じたに違いないと考えている。例えばそうした力が“暗黒光子”の交換によって生じているのかもしれない。そうした状況は,通常の陽子が光子を交換することによって電磁気力で相互作用しているのにたとえられる。2つの陽子が近づくと,それぞれが光子(電磁気力を担う粒子)を放出し,相手方がこれを吸収する。この交換によって運動量が移るため,2つの陽子が離れる。(続く)

 

続きは現在発売中の8月号誌面でどうぞ。

 

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