News Scan

平らなレンズ〜日経サイエンス2015年7月号より

レンズ豆とは無縁の形に進化

 

レンズという名称は,ゆるやかな曲面を持つ「レンズ豆」に由来する。だが,未来のカメラは光の焦点を結ぶのに平らなレンズを使うことになるかもしれない。出っ張りなしに光線を散乱・屈折できる平面レンズが大きく進歩しつつある。

 

くるくる丸めたり財布に忍ばせたりできるスマートフォンが望まれるなか,実験室レベルでは柔軟な電子回路や電池,ディスプレーなどができ始めている。だが,数mmの厚みを持つレンズが障害になっている。画像のぼやけを克服するために複数の補正レンズが必要になる場合はなおさらだ。

 

大きな前進は2012年に起こった。ハーバード大学の物理学者で技術者のカパッソ(Federico Capasso)らが,初歩的な平面極薄レンズを発表したのだ。このガラス片は湾曲していないにもかかわらず,高密度かつ高精度に配置されたシリコンの微細な隆起によって,入射光を特定の計算された方向へ曲げることができる。ただしこのレンズが機能するのは単一の色(波長)の光に対してだけで,それもあまり正確とはいえなかった。

 

これに対し2月のScience誌オンライン版に詳細が報告された最新版は,概念実証を超える域に達した。赤と緑,青の光を完全に集光でき,つまりこれらを組み合わせて多色画像を生み出せる。その後より大型の試作品を作り上げ,「まさに予測どおりに機能している」とカパッソはいう。これらのレンズは写真システムや顕微鏡,天文観測機器のサイズと費用を削減できるだろう。

 

また,いずれは柔軟なプラスチックの上にプリントされ,薄くて曲げられる機器が実現する可能性もある。研究チームはグーグルなど技術企業数社と実用化を協議している。こうした扁平レンズは新種の小型軽量ディスプレーや撮像システムに役立つだろうと,グーグルXの首席光学アーキテクトを務めるクレス(Bernard Kress)はいう。

 

問題は,レンズ豆に似ていないのにこれをレンズと呼べるかどうかだ。■

 

ほかにも話題満載! 現在発売中の7月号誌面でどうぞ。

 

サイト内の関連記事を読む