News Scan

ハチの略奪戦争〜日経サイエンス2015年4月号より

 命がけの戦いの理由は?

 

 グドール(Jane Goodall)は40年前,チンパンジーが戦争をすることを発見した。彼女はそれまで,チンパンジーは「人間よりも良心的」だと考えていた。だが動物の戦争というショッキングな行動の観察はそれが初めてではなく,2番目だ。80年以上前から,同種間で殺し合いをする生物が人間だけではないことが知られていた。一部の昆虫は戦争をする。

 

 オーストラリアに生息しているテトラゴヌラ・カーボナリア(Tetragonula carbonaria)というハリナシバチは戦争を仕掛けることで知られている。通常は別のハチの巣を奪うための戦争だ。自分の巣を作る手間を省くため,別の巣を盗んで改装する。豪クイーンズランド工科大学のカニンガム(John Paul Cunningham)によると,コロニー間の戦いは激烈で,「攻撃側と防御側の大群が空中で衝突し,ハチどうしが組み合ったまま地面に落ちてどちらも死んでしまう」。

 

 カニンガムらはこうした戦いを調べるなかで,カーボナリアが同種間で戦うだけでなく,まったくの異種であるテトラゴヌラ・ホッキングシ(Tetragonula hockingsi)のコロニーに攻撃される例を見つけて驚いた。異種間のハチによる戦争が記録されたのはこれが初めて。動物界全体でも,ほかにこの種の戦いが観察された例は一部のアリだけだ。

 

勝敗は五分五分

 これらハリナシバチの他種への攻撃性は極めて異例だったため,研究チームはクイーンズランド州でカーボナリアのコロニー約260個を5年間にわたって観察し,間違いではないことを確認した。ハチを外観で識別するのは難しいため,カニンガムのチームは,蜂蜜を採取するため巣が毎年切り開かれる際にその巣の構造を調べて,異種のハチに奪取された事例を特定した。

 

 カーボナリアの巣は小部屋が螺旋状に並んできちんと組織化された構造になっている。一方のホッキングシの巣は小部屋がでたらめに並んでいるように見える。カーボナリアがいた巣だとわかっていたものが翌年にホッキングシの巣の構造をしていたら,奪取が成功した現場だといえる。研究チームはこうした奪取の例を46件確認したが,カーボナリア対ホッキングシの勝敗はほぼ五分五分だった。詳細はAmerican Naturalist誌2014年12月号に掲載。(続く)

 

続きは現在発売中の4月号誌面でどうぞ。

 

サイト内の関連記事を読む