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ミトコンドリアの起源に新説〜日経サイエンス2015年4月号より

リケッチアが祖先である可能性が浮上

 

 ミトコンドリアは「細胞のエネルギー生産装置」として中学生でも知っている小器官で,その起源は約20億年前にさかのぼる。このエネルギー生産装置が発見されたのは19世紀だが,どのように細胞の装備品となったのかについてはまだ議論が続いている。

 

 ミトコンドリアの祖先は,単細胞生物が体内に取り込んだ自由生活細菌だ。ほとんどの生物学者は,この細菌が宿主の役に立ったと考えている。ある仮説は,エネルギーを生産するための水素をこのミトコンドリア前駆体が供給したとみる。また別の説では,大気中の酸素濃度が急上昇した時代に,嫌気性の細胞が自分にとって有毒な酸素を取り除くためにこの細菌を必要としたという。ともあれ両者はうまく共存し,ついには相互に依存して長期にわたる関係を築くこととなった。

 

ゲノムから祖先を探る

 これに対し,バージニア大学にいたウー(Martin Wu)とワン(Zhang Wang)が進化上の関係を新たに解析し,ミトコンドリア前駆体が実は寄生体だった可能性が浮上した。この説はウーとワンが最近構築したミトコンドリアの進化系統樹をもとにしている。この小器官とそれに最も近い現生の細菌について,それらのゲノムに基づいて祖先の関係性を割り出したものだ。

 

 ウーはこのDNAデータから,ミトコンドリアは「リケッチア目(もく)」という寄生性・病原性の細菌グループに属し,エネルギーを盗むタンパク質を作る祖先から進化したと推測している。この寄生性の前駆体はある時点で,その“泥棒遺伝子”を失い,現在のミトコンドリアが行っているように,宿主へのエネルギー供給を可能にする別の遺伝子を獲得した。この発見は2014年10月にPLOS ONE誌に掲載された。

 

残る不確実性

 しかし,この論文の結論に異議を唱える研究者もいる。ミトコンドリアの起源を研究しているマサチューセッツ大学アマースト校のサーシー(Dennis Searcy)は,ミトコンドリアがリケッチア目の子孫であるとするウーらの判断は進化系統樹の解釈を誤ったことによるという。だとすればウーらの解析は根本から崩れるだろう。(続く)

 

続きは現在発売中の4月号誌面でどうぞ。

 

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