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ゴムのようなガラス〜日経サイエンス2015年4月号より

 硬さと伸縮性を兼ね備えた新素材

 

 ガラスは丈夫だ。割れて粉々になるまでは。もしガラスにゴム紐のような伸縮性を持たせることができたら,決して割れない窓ガラスや自由に曲げられる電子機器用ディスプレー,宇宙航空分野などの高温環境下でも使える機械的センサーに使えるだろう。東京工業大学の稲葉誠二特任助教(現在は旭硝子)が率いるチームが,そんな伸縮ガラスを初めて作り出した。

 

 通常のガラスはケイ素またはリンを基本とする分子が強く結合し,規則的ではあるが結晶ではない3次元構造をなしている。これに対し稲葉らは,ゴムなどの物質と同様の鎖状の分子構造をしたガラスを設計した。酸化リンの比較的長い鎖が相互に緩く結びついている。

 

 このガラスを糸にして高温下で引っ張った後に放すと約35%縮み,伸縮性を示した。以前のガラスにはない特徴だ。去る12月のNature Materials誌オンライン版に報告。

 

 現在は旭硝子の中央研究所(横浜市)にいる稲葉は,まだ研究すべき点があるという。このガラスは220〜250℃で大きな伸縮性を示すが,究極的には室温に近い温度で同様の性能を実現できるものが望ましい。マサチューセッツ工科大学の物質科学者デムコビック(Michael Demkowicz)は稲葉氏の方法を利用して既存の導電性ガラスに伸縮性を持たせることも可能だろうと指摘する。

 

 遠からず,携帯電話やワイングラスを床に落としても悲惨な事態にならずにすむ日が来そうだ。■

 

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