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クマからの健康アドバイス〜日経サイエンス2015年3月号より

冬眠する動物から学ぶ手がかり

 


Image:Do Not Disturb!

冬眠は簡単な問題に対処するための複雑な解決策だ。冬には食物が少なくなる。この季節的食糧難を乗り切るため,ホッキョクジリスやアメリカクロクマなどの動物は動きの乏しい生理的状態に移行し,餌や水がなくても生き延びられるように変わる。こうした冬眠の仕組みを人間の健康に役立てる可能性が,研究者と医師の関心を集めている。

 

疾患:脳卒中

ヒント:冬眠中のホッキョクジリスの脳内血流は通常の1/10まで低下する。一般に,そんな酸素欠乏状態では脳卒中を起こすが,このリスはひと冬をちゃんと生き延びている。代謝を夏場の2%に低下させ,生命維持に必要な酸素量を非常に少なくしているからだ。脳卒中で倒れたばかりの患者の代謝を救急救命士が同様に低下させることができれば(例えば体を冷やすなどして),恒久的な脳損傷を防げるかもしれないと,アラスカ大学フェアバンクス校の生物学者バーンズ(Brain Barnes)はいう。

 

疾患:糖尿病

ヒント:太りすぎの人はインスリンに反応しなくなることが多い。このホルモンは細胞が血液から取り込む糖の量を調節しており,血中の糖が多すぎると2型糖尿病になる。しかしハイイログマは秋に体重が45kg以上も増えるのに,糖尿病にはならない。ハイイログマの脂肪細胞は冬が近づくとインスリン感受性が高まり,糖を処理して保存できるようになることが最近の研究でわかった。バイオテクノロジー企業のアムジェンは,クマのインスリン感受性を調節しているのと同じタンパク質を糖尿病患者で変化させたら同様の効果が得られる可能性があるとみて,研究を進めている。(続く)

 

 

 

再録:別冊日経サイエンス222「食の未来 地中海食からゲノム編集まで」

 

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