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耐性菌は肥やしが好き〜日経サイエンス2015年3月号より

牛糞は抗生物質耐性菌の増殖を促進する

その牛が抗生物質を投与されていなくても

  

 抗生物質が登場したころ,農家はやみくもにこれを使った。ストレプトマイシンをニワトリの餌に加えて成長を促し,低用量をブタに与えて太らせた。だがいまや,家畜に抗生物質を使いすぎると耐性菌の出現を助長して人間の健康を脅かしかねないことがわかっている。どんな規制を設ければよいか議論が続くなかで,耐性菌がどのように進化して人間に感染するのかの解明が依然として重要な課題として残されている。

 

 米大統領府科学技術政策局(OSTP)の科学担当副局長を務める微生物学者ハンデルスマン(Jo Handelsman)は,そうした感染経路の1つを追跡している。彼女が「家畜小屋から食卓へ」と呼ぶ経路で,乳牛について調べた。乳牛は抗生物質を投与されている場合が多く,その糞尿は堆肥となって作物に使われる。この堆肥は栄養だけでなく抗生物質耐性菌を含んでいるかもしれず,だとすれば問題だろう。作物に耐性菌がくっつき,それがスーパーマーケットの店頭に並んで,一部は生のまま食される可能性があるからだ。

 

抗生物質フリーの牛糞で耐性菌

 耐性菌がどのように出現するかを明らかにするため,ハンデルスマンはエール大学の同僚とともに2013年,コネティカット州の同大学近くにある農場で作られた堆肥を畑にまいた。この堆肥は抗生物質を投与されてないウシの糞だったのだが,予想外の発見をもたらした。抗生物質耐性遺伝子を持つ土壌細菌の数が,合成窒素肥料をまいた場合よりもこの堆肥で作物を育てた場合のほうが多くなったのだ。もとのウシは抗生物質を摂取していないのに。この成果は去る10月に米国科学アカデミー紀要に発表された。

 

 抗生物質を投与されたブタの糞が抗生物質耐性の大腸菌などを含んでいることが過去の研究で示されていたが,今回の結果は,抗生物質の使用以外に耐性出現を促進する要因が存在することを示している。堆肥自体が持っている何かが天然の耐性菌の増殖を促しているのかもしれない。(続く)

 

続きは現在発売中の3月号誌面でどうぞ。

 

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