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キーストーン病原体〜日経サイエンス2015年1月号より

keystone pathogen

その数の割には,無害な微生物叢を病気を引き起こしうるものに転換するのに非常に大きな役割を演じている微生物

 

人体内部や体表に生息している微生物の大半は健康を脅かしてはいないが,その数がとめどなく増えると問題を生じるものが多い。そこで,免疫系はこうした常在菌をあちこちで刈り取り,数が増えすぎないようにしている。

 

だが微生物のなかには,免疫系のこの活動を妨害して勢力均衡を自分に有利な形へ歪めるものがある。歯周病の主犯とされるポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)が一例だ。この細菌が口のなかに少数いるだけでも,白血球が殺菌化学物質を作らなくなる。この結果,口中の微生物数が爆発的に増え(健康的な細菌叢に寄与していた微生物も含め),歯肉炎として知られる障害を起こす。

 

口腔細菌学者ハジシェンガリス(George Hajishengallis)が率いるペンシルベニア大学のチームは最近の2件の研究で,ジンジバリス菌の反乱の背後にあるメカニズムを解明した。その知見に基づき,あるシグナル物質をブロックすると口中の微生物叢が正常に回復することを,マウスを使った実験で発見した。

歯肉炎に対する標準的な処置は歯科医による歯垢除去とデンタルフロスを用いた歯間清掃の徹底だが,これによって口中の細菌数は一時的に減るものの,白血球の殺菌能力は回復しない。なので,歯科医も炎症の再発をうまく防げない。研究チームは今回の発見が対処法につながる可能性があるとみている。

 

歯肉炎以外の慢性炎症性疾患もキーストーン病原体が原因になっているかもしれないとハジシェンガリスはいう。だが,その関連を特定するには,人間が何兆個もの微生物と共生するのを許している抑制と均衡をキーストーン細菌がどのように操っているのかについて,詳しく理解する必要がある。■

 

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