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スケスケ科学〜日経サイエンス2014年12月号より

ネズミの体を透明にする新技術

  

 動物の内部を熟視すると科学的発見につながる──これは確かだ。1960年代と1970年代に遺伝生物学と発生生物学が爆発的に進んだのは,線虫(Caenorhabditis elegans)やゼブラフィッシュ(Danio rerio)などの生まれつき透明な動物が調べられるようになった後だ。それらによって,若い細胞が完全な有機体に発達するのを観察することができた。

 

 そしていま,哺乳動物の体を透かして見ることが初めて可能になった。マウスやラットを透き通らせる技法で,おそらくはもっと大きな動物にも適用できる。

 

血管から薬剤を入れて透明化

 哺乳動物の脳などの組織を透明にすることは以前から可能だが,その処理には数カ月かかる場合がある。この処理速度を速め,より大きな組織に適用するため,カリフォルニア工科大学の神経科学者グラディナル(Viviana Gradinaru)はネズミの血管を利用した。死んだラットの血管を通して一連の化学物質を組織へ送り込むと,これらの化合物が濁った脂肪を除去し,澄んだ液体に置き換える。わずか2週間後にラットの体全体がスケスケになり,クラゲのような標本となった。この結果は8月,Cell誌に発表された(写真つき。食事の前でなければどうぞ)。

 
 透明化の後,抗体や色素で標識しておいた細胞を見ることができる。神経線維の位置特定やがん細胞の追跡に役立つだろう。「以前は見ることができなかったものを見られるようになった」とマサチューセッツ大学医学部の遺伝子治療研究者ガオ(Guangping Gao)はいう。ガオは体内のウイルスを追跡したいと考えている。

 

 グラディナルによると,この手法は血管系を持つ生物なら大きさを問わず,人間にも使えるという。■

 

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