News Scan

大きな動物が感染症を抑制〜日経サイエンス2014年10月号より

病気を媒介する小動物が抑えられている

 

 ゾウやガゼルなどの大型哺乳動物が絶滅に向かうと小動物が跡を継ぐと考えられてきた。そして小動物(ネズミが好例)が繁殖すると,病気を媒介するノミの数も増える。最近,このシナリオが実験的に確認された。困ったことに,このシナリオが現実になると動物と人間の間でうつる感染症が増える恐れがある。

 

 この研究はいまから20年前,ケニアのムパラ研究センターの生物学者たちが生物多様性の重要性を解明するために大規模な実験を始めたのが出発点だ。同センターの広大な敷地を4ヘクタールずつに分け,各区画にすむ野生生物のタイプを変えて比較した。ある区画ではキリンやシマウマなどの大型動物をすべて取り除き,体重15kg未満の小型哺乳動物だけを残した。そして何年も,これらサバンナの各区画に生息する動物種を記録し続けた。

 

ネズミ,ノミ,バルトネラ菌

 カリフォルニア大学サンタバーバラ校の生態学者ヤング(Hillary S. Young)はこれらの記録を用いて,大型哺乳動物がいない区画とそれらの出入りが自由な区画について,齧歯(げっし)類の個体数を比較した。この結果,大型哺乳動物を取り除いた区画では,齧歯類の数が自然のままの区画の2倍に上ることを発見し,5月の米国科学アカデミー紀要に報告した。

 

 大型動物を取り除いた区画に残った哺乳動物11種のうち,最も数が多いのはキタチビオホオブクロネズミで,全体の75%を占めた。そして予想通り,バルトネラ菌を運ぶノミが見つかる確率が2倍になった。バルトネラ菌はヒトを含む哺乳動物に感染し,臓器に重い障害を引き起こす。

 

 「野生生物集団の変化は疾病リスクに大きな影響を与える可能性があり,実際に与えている」とヤングはいう。そして,この結果はアフリカのサバンナに限らずどこででも生じると付け加える。野生生物の保護が自分自身の健康維持にもつながると人々が理解すれば,おそらくみな生物多様性の損失を看過しなくなるだろうとヤングは期待している。■

 

ほかにも話題満載! 現在発売中の10月号誌面でどうぞ。

 

サイト内の関連記事を読む