News Scan

Y染色体は消えず〜日経サイエンス2014年9月号より

男性染色体の縮小は止まっている

 

 Y染色体は46本の染色体のなかで特に短い。この染色体が哺乳動物の性別をオスに決めていることはよく知られているが,他の染色体,とりわけパートナーのX染色体と比べると見劣りがする。Y染色体は2億~3億年前には約600個の遺伝子をX染色体と共有していたが,それがいまや,たったの19個になってしまった。一部の遺伝学者は,こうした遺伝子損失はY染色体が実際に朽ち果てつつあることを示していると2002年に指摘した。1000万年後にはY染色体はなくなってしまうだろうという。そうなると,オスはどうすりゃいいのか……。

 

 だが最近の研究によると,Y染色体における遺伝子の減少は止まっている。実際,過去2500万年間は安定していると,マサチューセッツ工科大学の生物学者でNature 誌に掲載されたこの研究論文の執筆に加わったペイジ(David Page)はいう。最近の生物種ほどY染色体は小さいものの,縮小は数百万年前から止まっていることをペイジらは明らかにした。

 

 この安定性は,性別とは無関係に心臓や血液,肺などにおける重要な細胞機能を担っている約12個の遺伝子に起因しているようだ。「これらは細胞の中央司令室で重要な役割を果たしており」,自然選択がそれらの存続を選んでいるとペイジはいう。

 

 しかしY染色体消滅説を支持するある研究者は納得していない。ここ数百万年は単なる一時休止期間だとオーストラリア国立大学の遺伝学者グレイブズ(Jennifer Graves)はいい,少なくとも2グループの齧歯(げっし)類はY染色体なしですますようになっていると指摘する。だが今回の新研究は,Y染色体がすでに小さくなってはいるものの,現在のサイズを今後も維持するだろうことを示唆している。■

 

ほかにも話題満載! 現在発売中の2014年9月号誌面でどうぞ。

 

再録:別冊日経サイエンス219 「人類への道 知と社会性の進化」

 

サイト内の関連記事を読む