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土星で衛星誕生中〜日経サイエンス2014年9月号より

環のなかで小さな月が生まれつつあるらしい

 

土星は美しい環のほか,62個の衛星群も従えている。水星よりも大きなタイタンのような巨人から,客船タイタニック号ほどの小さなものまで様々だ。だが最近,天文学者たちはこれまで見たことのないものを目にしているようだ。土星の壮大な環から,衛星が生まれつつあるらしい。

 

「この発見は偶然だった」とロンドン大学クイーン・メアリー校の惑星科学者マレー(Carl Murray)はいう。彼は2013年4月,惑星探査機カッシーニが撮影した土星の衛星の新着画像を調べていて,A環の端に長さ1000kmを超える明るい部分があることに気づいた。A環は土星にある主要な3つの環のうち最も外側に位置する。

 

マレーらはIcarus誌7月1日号で,この明るい場所では新しい衛星が生まれようとしている可能性があると推測している。直径は1km未満と小さすぎて確認できないが,昨年は何かがこの衛星に衝突して輝きが生じたため,初めて目をひいた。A環で新たな衛星が生まれている可能性は十分にある。A環の外側に位置する比較的大きな衛星ヤヌスの重力の影響で,A環外縁部の粒子が凝集されるからだ。凝集塊が十分な大きさに発達すると,それ自体が重力によってさらに多くの物質を引き寄せ,ついには衛星が生まれるだろう。マレーは今回の例は最近に形成されたものだと考えているが,数年前にできたのか数百万年前なのかはわからない。

 

うまく育つか,分解するのか

今回の発見に関与していない米航空宇宙局(NASA)エイムズ研究センターのクッチ(Jeff Cuzzi)は,マレーが初期の衛星を発見したのは間違いないとみる。より重要な問題は,この衛星の運命だという。環から抜け出して衛星としての位置を確立するか,それともばらばらに分解するのか?

 

この生まれたての衛星の行く手にはいくつかのハードルが待ち構えている。環と同様に氷でできていると思われるため,流星体の衝突によって今後数百万年で粉砕されてしまうかもしれない。

 

カッシーニが2016年にA環に接近して鮮明な画像を撮影すれば,衛星を直接確認できるだろうとマレーは期待している。土星の環は平らで大質量天体の周りを回っている点で,若い恒星が持つ原始惑星系円盤に似ている。今回の衛星の形成から,惑星がどのように生まれるのかについて理解が進む可能性がある。土星の環は初期の太陽系など銀河のなかで新たに生まれる惑星系の縮図といえるかもしれないのだ。■

 

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