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グラフェンの暗黒面〜日経サイエンス2014年9月号より

上水道に混入すると危険を生じるかも

 

 
 グラフェンは人気のナノ材料だ。単一原子の厚さの炭素シートからできていて,これまでに試された材料のなかで最も強いほか,非常に優れた電子特性を誇る。10年の研究を経て実験室から商用技術へ移行しようとしつつあり,間もなく軽量の航空機部品や大容量の電池として登場するだろう。

 

 そこで,作業者がグラフェンに暴露したりグラフェンが上水道に混入したりする前に,潜在的なリスクを予測しておくのがよいだろうと,カリフォルニア大学リバーサイド校の環境工学者ウォーカー(Sharon Walker)はいう。ウォーカーらはこの材料の一形態である酸化グラフェンの水中での挙動を観察し,5月のEnvironmental Engineering Science誌に報告した。

 

 地下水を模した水溶液の場合,酸化グラフェンは凝集して沈み,リスクはないと考えられた。だが,湖や貯蔵タンクの水など地表水を模した水溶液では事情が違った。酸化グラフェンは底に沈まず,動植物が腐敗分解して生じた有機物質にくっついて浮遊した。こうした移動性は動物や人間が酸化グラフェンを摂取する可能性を高めると考えられる。酸化グラフェンはマウスと人間の肺細胞に有毒であることが,初期のいくつかの研究で示されている。

 

 「これはグラフェンの上水道での振る舞い方を垣間見た初の例だと思う」とウォーカーはいう。もしこれらの材料が本当に人間の健康にリスクを及ぼすとわかった場合,地表水中の移動性は大きな問題になりうる。ウォーカーはこれらの研究が環境保全に十分に間に合い,産業界がグラフェンとその誘導体の開発法を検討したり,米環境保護局(EPA)などが規制の方法を検討したりするのに役立つよう願っている。■

 

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