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注意散漫を防ぐ脳の力〜日経サイエンス2014年9月号より

集中するのとは別の仕組みが存在する

 

  高速道路のどこかに目的の出口があるのは確かなのだが,以前にそこから出た経験はない。通り過ぎてはまずいので,道路沿いの出口標識を見逃さないよう注意はしているのだが,気を散らす邪魔者がいろいろと視野に入ってくる。広告板,いかしたオープンカー,着信音が鳴り始めたダッシュボード上の携帯電話などなど。そんななか,人間の脳はどのように出口標識に集中するのだろうか?

 

 この謎を解くために神経科学者は通常,探している対象に対して脳が反応を強める様子を調べる。目的物を発見したときに特に強い電気パルスが発生する現象だ。だが,4月のJournal of Neuroscience誌に報告された研究によると,別の仕組みも同じくらい重要らしい。脳はその他のものへの反応をあえて弱め,目的物の重要度を相対的に高めているのだ。

 

無用な反応を抑えて

 カナダにあるサイモン・フレーザー大学の認知神経科学者ガスパー(John Gaspar)とマクドナルド(John McDonald)は,大学生48人にコンピューターを使った注意力テストを受けてもらい,この結論に至った。そのテストは,緑色の丸のなかに交ざっている1個の黄色い丸を素早く発見するというもの。ただし,緑のなかでより目立つ赤い丸も1個まぎれており,それに注意を奪われないようにしなければならない。

 

 被験者の頭に電極のネットをかぶせ,テスト中の脳の電気活動をモニターした。この結果,探している黄色の丸を除くすべての丸印に対する脳の反応が常に抑制されていることがわかった。この神経プロセスが実際に働いている直接の証拠をつかんだのはこれが初めてだ。

 

 「反応抑制は以前から知られてはいたが,注意力を高めるメカニズムとしてはあまり注目されていなかった」とマクドナルドはいう。「今回,抑制が注意散漫をどのように防いでいるかがわかった」。

 

 こうした研究は注意欠陥・多動性障害(ADHD)など注意力に問題がある人たちの脳で何が起きているかを解明する一助となるかもしれない。そして,注意をそらすものがますます増えて交通事故の主因ともなっている現在,脳がどのように注意力を発揮しているのかに関する知見はおしなべて私たちの注意をひくはずだ。■

 

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