News Scan

腸の甘味受容体を狙え〜日経サイエンス2014年8月号より

糖尿病治療薬の作用標的に

 

  3年前,フィラデルフィアにあるモネル化学感覚センターの研究グループが衝撃的な発見をした。人間の腸が甘みを感じているというのだ。舌と同様,ブドウ糖と果糖を検出する甘味受容体が腸と膵臓に存在する。

 

 これを受け,サンディエゴにある製薬会社エルセリクス・セラピューティクスは,この味覚受容体を標的とする医薬品を開発した。第2相臨床試験が行われているこの薬は,2型糖尿病の治療に最もよく処方されているメトホルミンを改変したもので,「ニューメット」という。

 

 メトホルミンは胃で溶けて血流に乗って肝臓へ運ばれ,肝臓が膵臓に指令を出す。これに対しニューメットは腸と同じ酸性度になったときに初めて溶けるように設計されている。腸内で放出されると甘味受容体に結合し,この受容体から膵臓に,血中ブドウ糖濃度を調節するホルモンであるインスリンを作るよう求める信号が送られる。「自然に存在するシグナルを調節するわけだ」とエルセリクス社の社長兼最高経営責任者バロン(Alain Baron)はいう。

 

新たな作用経路

 ニューメットはこのように作用経路が直接的なので,メトホルミンの通常の投与量の半分で同等の効果がある(第1相試験による結果)。また,この新たな経路のおかげで,血流に入る薬物の量が70%減になる。これは重要だ。メトホルミンは長期間使用していると体内にたまってくるので,腎臓病の患者(2型糖尿病患者の約40%は腎臓病でもある)には使えない。腎臓が血中からメトホルミンを除去できないため,致命的な事態になる恐れがあるためだ。

 

 バロンは他の薬も腸を標的にするよう改変できると考えている。エルセリクス社が分離独立させたある子会社は現在,腸管下部に作用して満腹シグナルを強める減量薬の研究を進めている。■

 

ほかにも話題満載! 現在発売中の8月号誌面でどうぞ。

 

サイト内の関連記事を読む