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携帯データにマスク〜日経サイエンス2014年8月号より

ホントのデータを隠すスマホ

 

  警察が麻薬の売人とおぼしき人物の携帯電話を押収した。ところが母親以外に電話をかけた形跡がない。一方,厳しい報道管制を敷いている全体主義国家の空港で,海外ジャーナリストの携帯電話が検査される。が,保存データを調べた結果,ジャーナリストはずっと浜辺にいたことがわかる。麻薬の売人もジャーナリストもそのまま放免だ。しかし数分後,当局が捜していた名前や番号,GPSデータが再び携帯電話に現れる……。

 

 新しいプログラミング技法によってこうした話が現実のものになるかもしれない。コンピューター科学者のカールソン(Karl-Johan Karlsson)は事実を偽るように携帯電話をプログラムし直した。アンドロイドをベースとするスマートフォンのオペレーティングシステムを改変し,おとりデータ(疑義のない電話番号など)を載せて,実際のデータが捜査にかからないようにしたのだ。1月に開かれたシステム科学ハワイ国際会議で発表した。

 

善用も悪用も可能

 カールソンはこの技法を警察が一般的に使っている2つの捜査ツールで試した。どちらのツールも通話記録や位置データ,さらにはパスワードまで引き出せる。だが,カールソンの改変システムに対しては,携帯にプログラムされた偽の情報が抽出され,実際の内容は検査を逃れた。

 

 このように有効ではあったが,FBIやNSA(米国家安全保障局)が行っている高度な解析を阻止するものではないとカールソンはいう。一方,こうした方法は一部の犯罪について法廷審理を困難にする可能性がある。同じ携帯電話が2つの異なる“事実”を語ると話が複雑になる。

 

 著名なコンピューターセキュリティー専門家であるヒッポネン(Mikko Hypponen)は,カールソンの技法はスパイと警察,機器ユーザーの軍拡競争がまた一歩進んだことを示しているという。また,プライバシーを正当に保護する方法を見つける取り組みと見ることもできる。「この種のツールは善用も悪用も可能なのだ」。■

 

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