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大気を汚す樹木〜日経サイエンス2014年8月号より

揮発性有機物が思わぬ影響

 


by Tim Green

 交通量の多い道路沿い,ポプラやヌマミズキの街路樹の下で深呼吸したくなっても,ちょっと待った。これらの木々は酸素を吐き出しているが,別の化学物質も放出している。その物質が空気中で化学反応すると,肺を傷つけるオゾンを作り出す場合がある。

 

 「この現象には驚いた」と,独ポツダムの高等サステイナビリティ研究所のシニアフェローで都市部の樹木排出物を研究しているチャーキナ(Galina Churkina)はいう。樹木の種類によっては,街路樹として植えるとオゾン濃度がかなり上がることがある。オゾンは酸素分子の一種で,喘息や気管支炎などの呼吸器疾患に関係している。

 

自動車排ガスと反応してオゾンを生む物質

 自動車や発電所と同様,樹木は揮発性有機化合物(VOC)と呼ばれる化学物質を空気中に放出している。この物質は日光の存在下で自動車の排気ガスに含まれる窒素酸化物と反応してオゾンを形成する。オゾンはスモッグの成分のひとつであり,健康を脅かす。

 

 VOCは化石燃料を燃やした副産物として自動車の排気管や工場の煙突から出ているが,樹木がこの物質を放出するのは,昆虫を遠ざけたり花粉媒介者を引き寄せたりするのが目的だろうと考えられている。カバノキやチューリップ,シナノキなどはごく少量を出すだけだが,ヌマミズキやポプラ,カシ,ヤナギなどは大量のVOCを生じ,放出量の少ない樹木に比べて結果的にオゾン濃度が8倍になることもある。

 

 チャーキナらはVOC放出量の多い樹種が過剰に植えられている都市を特定してはいない。それは都市計画担当者の仕事だ。オゾンの形成には日光が必要で,生成反応は温度が高いほど活発になるので,寒冷で曇りがちな都市は,暖かく晴れの日が多い街よりも心配が少ない。だが,気候変動で気温が上がると問題が悪化する恐れがある。

 

街路樹選びに配慮を

 ということは,VOC放出量の多い街路樹は伐ってしまうべきなのか? チャーキナの答えは「ノー」だ。放出量の最も多い木であっても散在している程度なら問題ない。だがシナノキはポプラよりもよいと理解しておくことは,大都市でこの問題を避けるのに役立つ。(続く)

 

続きは現在発売中の8月号誌面でどうぞ。

 

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