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長髪の物理学〜日経サイエンス2014年7月号より

自然にカールした長髪の数理モデルはアニメ制作をさらに高度化

 

 ドリームワークス・アニメーションの「シュレック」シリーズで,フィオナ姫はほぼ例外なく髪を後ろで束ねている。フィオナ姫がこのヘアスタイルを好む理由はファッションよりも物理学と関係がある。髪を束ねずにいる状態をアニメーションでリアルに描くには一連の複雑な方程式を計算する必要があるため,アニメ制作者はほどけたロングヘアよりもショートカットやアップの髪形を選ぶことが多い。同様に,大写しになる人物の髪は巻き毛ではなくストレートがほとんど。そのほうが3次元描画に要する計算が簡単ですむからだ。

 

 だがアニメ制作のツールは進歩しつつあり,いずれはリアルな巻き毛のキャラクターがドリームワークスやピクサーの作品にあふれるようになるかもしれない。最近,ある研究チームが一束の巻き毛の物理学を解きほぐし,結果をPhysical Review Letters誌に発表した。「自然な巻き毛の完全な3次元形状を記述したのはこれが初めてだ」と,論文を共著したマサチューセッツ工科大学の機械工学および土木・環境工学の助教ライス(Pedro Reis)はいう。「何しろ巻き毛の幾何学形状は著しく非線形,つまり複雑なのだから」。

 

当初の目的は構造物の曲率研究

 ライスらは初めから巻き毛の数理モデルを作ろうとしていたわけではない。海底ケーブルや石油・ガス管,細菌の鞭毛など,細長い構造物の曲率を調べるのが目的だった。

 

 彼らはまず中空チューブ状の型を作り,これをまっすぐ伸ばすか直径3.2cm~1mの円筒形の物体に巻きつけた。そこにゴムのような材料を注入し,これを乾燥させて,様々な曲率の柔軟な棒を作った。それらをつり下げ,重力が棒の形状にどう影響するかを調べた。棒をつり下げた様子は巻き毛とそっくりで,それらが組み合わさってストレートやアフロなど様々な髪形になるのと驚くほど似ていた。

 

 そこで,約1万1000回のコンピューターシミュレーションを実行し,つるされた細長い構造物がどんな幾何学形状を取るかを4つの性質(曲率,重さ,長さ,剛性)の関数として表す状態図を作成した。こうしたツールは最終的にアニメ制作ソフトに組み込まれる可能性があるが,そのためには頭髪全体がどう相互作用するかや,風など外力の影響をどう受けるかを調べる必要があるだろう。(続く)

 

続きは現在発売中の7月号誌面でどうぞ。

 

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