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鳴き声聞けば百戦危うからず〜日経サイエンス2014年7月号より

雄ジカはライバルの求愛コールを聞いて疲労度を判断しているらしい

 

 オスのダマジカは周囲をはばかることなく交尾相手となるメスを探す。繁殖期になると1時間に3000回も求愛の鳴き声を上げる。この鳴き声には2つの働きがある。メスを惹きつける働きと,ライバルのオスを遠ざける働きだ。だがBehavioral Ecology誌に報告された最近の研究によると,この鳴き声にはちょっと聞いただけではわかりにくい隠された意味があるらしい。

 

 毎年10月になると,英ウェストサセックス州のペットワース公園に25頭ほどの雄ジカが集まり,縄張りを主張して戦い,求愛の声を上げてメスを誘おうとする。こうした場所は「レック」と呼ばれる。「レックは哺乳動物では本当にまれだ。有蹄類もそうで,ダマジカはレックを形成することが知られている唯一のシカだ」と,この研究を監督したロンドン大学クイーン・メアリーのマケリゴット(Alan McElligott)はいう。

 

元気な声と疲れた声

 求愛コールは,その声の主の体格や集団内での順位などの情報を明らかにする。そうした情報は,関心を抱いたメスにもライバルのオスにも有用だ。レックでは考えうるあらゆるタイプの鳴き声が聞かれる。マケリゴットは以前の研究で,鳴き声の質がしだいに低下することを見いだした。「成熟した雄ジカはレックの間,2週間ほど何も食べないので疲弊してしまう」とマケリゴットは説明する。

 

 この疲労が鳴き声に反映するのだが,他のオスはそれに気づいているのだろうか? レックには大勢の見物人が集まるので,ペットワース公園のダマジカは人間に慣れている。このおかげで,ロンドン大学クイーン・メアリーのポスドク研究員ピッチャー(Benjamin J. Pitcher)はシカの活動を邪魔することなく音響機材を持ち歩いて調べることができた。

 

 事前に録音しておいた鳴き声を流したところ,オスがまだ元気な繁殖期初めの声と,疲弊した後期の声をシカたちが区別できていることがわかった。ライバルのオスの鳴き声が疲れていたら,その縄張りを奪うべく戦いを仕掛けてみる価値があるだろう。下位のオスが上位のオスに挑戦する場合,実際に勝てることを確かめておくのが最善だ。■

 

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