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乳がんを加速する真犯人?〜日経サイエンス2014年6月号より

コレステロール代謝産物の容疑が濃厚に

 

 心臓病の危険因子を持つ女性は乳がんになりやすい傾向がある。その理由は長らく不明だが,最近の研究でコレステロールが深く関与している疑いが浮上してきた。

 

 女性の乳がんの大半はエストロゲンの作用で悪化する。このホルモンが乳がん細胞のタンパク質(受容体)と結びつくと,腫瘍の増殖が進む。だから,テキサス大学サウスウエスタン医学センターの小児科医で生物学者のショール(Philip Shaul)らは,ごく普通のコレステロール分解産物もエストロゲン受容体を活性化させるという研究報告を知って,これは乳がんにも影響するかもしれないと考えた。ショールはデューク大学のがん生物学者マクドネル(Donald McDonnell)と共同で,「27HC」というコレステロール産物がヒトの乳がん細胞の成長を促進することを2008年に明らかにした。

 

さらに踏み込んで追跡

 この研究を基礎に,ショールとマクドネルはエストロゲン受容体を持つヒトの乳がん細胞をマウスに移植して27HCの影響を見る実験を別々に行い,27HCが腫瘍の成長を促進することを明らかにして2013年11月にそれぞれCell Reports誌とScience誌に報告した。

 

 ショールはさらに,患者から得たサンプルを使って,乳がん患者の正常な乳房組織は乳がんではない女性に比べて27HCの値が3倍であることを突き止めた。乳がん細胞でも2.3倍だった。また,腫瘍中の27HC分解酵素の濃度が低い患者は生存率が低かった。一方,マクドネルの研究チームがマウスに高コレステロールまたは高脂肪の餌を与えて通常の餌を食べたマウスと比較したところ,乳がんになる率が高まった。この2つの論文によって「27HCは乳がん研究の注目の的になった」とスペインのリスボンにある分子医学研究所の生物学者ディアス(Sérgio Dias)はいう。

 

コレステロールを標的に

 しかし血中コレステロール濃度が乳がんのリスクにどう影響するかはまだわかっていない。ショールの研究では,患者の乳がん組織中の27HC値と血中コレステロール値の間に一貫した関連性が見られなかったためだ。「だが,高コレステロールの女性のなかに乳がんリスクも高いグループが存在するだろうと思われる」とショールはいう。(続く)

 

続きは現在発売中の6月号誌面でどうぞ。

 

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