きょうの日経サイエンス

2013年12月13日

もうひとつの「『光子の裁判』再び」

 1月号の特集「量子世界の弱値」の巻頭に掲載した『光子の裁判』再び 波乃光子は本当に無罪か」について,実は著者の細谷曉夫先生から頂いた原稿は2つありました。普通の文章で書かれた原稿と,その元になった,計算過程を数式で表した原稿です。

 

 今回の特集を作らせて頂く際,先生とは何度となく議論しました。特に問題になったのは,どんな方法で「弱値」の概念を説明するかということでした。量子力学自体,それほど読者の方に知られているわけではありません。まして弱値となると,知っている人はほとんどいません。この話を説明するのによく使われる道具立てはどれも一般読者には想像しにくく,イメージして頂くのが容易ではないと思われました。

 

 あれこれ検討を重ねるうち,細谷先生は,「『光子の裁判』に即してすべてを説明しましょう,その方法を考えます」とおっしゃいました。「光子の裁判」は,リチャード・ファインマンが「量子力学の精髄」と呼んだダブルスリット実験を,朝永振一郎が一般読者向けに書いた有名な法廷劇です。

 

 ですからこの記事については,先行する論文があったわけではないのです。先生は記事のために弱測定のスキームを考え,測定結果を計算し,ほかの物理学者の方と何度も議論して内容を吟味してから,それを普通の文章に“翻訳”されました。

 

 弊誌にはもちろん,普通の文章で書かれた方の原稿を掲載させて頂いたわけですが,このたび先生のお許しを得て,もう一方の数式で書かれた原稿の方も,読者の皆様にお届けすることに致しました。量子力学の基礎知識がある方向けですが,そうでない方もチラ見すると面白いと思います。この一見わけのわからない複雑な式が,あの記事に書かれた内容を語っているのです。

 

 また,こちらを先にお読みになって,弱値に興味を持たれた方は,日経サイエンス1月号の特集「量子世界の弱値」をお手にとって頂けましたら幸いです。

 

 

無料ダウンロードはこちらヤングの2重スリットの実験と『弱値』」   細谷 暁夫