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卵フリー,おかわりどうぞ~日経サイエンス2014年3月号より

植物性タンパク質で鶏卵を代替する試み

 

 かつてHIVワクチンの開発に携わっていたクライン(Josh Klein)は,最近は別の生化学的難問に取り組んでいる。しっとり,ふんわりしたケーキを作ること。そんなのとっくにあるじゃないかと思うかもしれないが,違うのだ。サンフランシスコにあるハンプトン・クリーク・フーズ社の生化学研究部長であるクラインの任務は,鶏卵が調理において担っているすべての機能を体系的に特定し,それらを植物性タンパク質で再現することだ。

 

鶏卵からの脱却

 ハンプトン・クリーク社の創業者テトリック(Josh Tetrick)は完全菜食主義者だが,彼の狙いは他人を菜食主義に転向させることではない。テトリックが望んでいるのは,価格面で鶏卵をしのぐ製品を提供することによって,様々な食事に「持続可能性を忍び込ませる」ことだ。技術系ベンチャーキャピタルを後ろ盾とする同社は最近,マヨネーズの代わりになる「ジャストマヨ」と,クッキー作りで鶏卵の代わりに使える「ビヨンドエッグ」を発売した。

 

 生態学的に見直すべき対象として,鶏卵生産は適切な例だといえる。全世界で雌鶏が産む卵は年間に1兆個を超えるが,その効率は驚くほど悪い。2003年にAmerican Journal of Clinical Nutrition誌に掲載された研究によると,鶏卵の生産で1kcalのタンパク質を得るには39kcalのエネルギーが必要で,牛肉と並ぶ非効率だ。これに対し植物の場合,投入エネルギーとタンパク質出力の比は2.2対1である。

 

クッキー,スクランブルエッグ,ケーキ

 鶏卵の代用品はアレルギー患者などのためにすでに売られているが,クラインはそうした既存品よりも科学的な方法を用いて開発を進めているという。1500種類以上の植物を調べ,鶏卵の代役に特に適した11の候補を見つけた。「卵には単なる栄養以上の働きがある」とクラインはいう。「温度やpH,塩分などに反応する」。乳化や凝固,泡立てなどそれぞれの機能を果たすタンパク質を特定することにより,味を損なうことなく全面的に卵を置き換える初の製品ができるだろうと,クラインとテトリックはいう。

 

 同社の次の目標は,調合ずみのクッキー生地(生で食べてもサルモネラ菌の心配なし)とスクランブルエッグ用の代替品だ。市販の鶏卵代用粉末は一般に溶き卵にならないし,多くの液体製品は実際には卵をベースにしている。(続く)

 

 

続きは現在発売中の3月号誌面でどうぞ。

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