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進化する不確定性原理,実験検証~日経サイエンス2014年3月号より

誤差と擾乱の下限を語る新たな不確定性関係式を弱測定で実証した

 

 「物体の位置と運動量の両方を正確に知るのは不可能である」。量子力学の巨人ハイゼンベルクが打ち立てた不確定性原理の式に代わって,名古屋大学の小澤正直教授が提唱した式が実験で検証されたのは,2012年1月のことだ。2年後の今年1月,東北大学の枝松圭一教授と小澤教授らのグループは,小澤の式をさらに厳密にした新たな誤差と擾乱の不確定性原理の式が成立することを,「弱測定」と呼ばれる前回とは異なる方法で実験実証した。

 

 量子力学によれば,物体の2つの物理量を,ある種の組み合わせ(例えば位置と運動量)で測るとき,両方を正確に測ることはできない。物理量Aを正確に測れば測るほど,物理量Bに不規則な乱れ(擾乱)が生じてしまう。ハイゼンベルクはAの誤差とBの擾乱にはトレードオフの関係があり,その積を一定値より小さくはできないと予測した。これをハイゼンベルクの不確定性原理と呼び,量子力学の世界観を象徴する式として知られるようになった。

 だがハイゼンベルクの式は特定の思考実験から出てきたもので,誤差と擾乱の定義も,式の証明もない。小澤教授は2003年,測定過程を厳密に定式化し,ハイゼンベルクの式に代わる新たな不確定性原理の式を導いた。2年前,ウィーン工科大学の長谷川祐司准教授らのグループが,中性子のスピンを測定する実験で,誤差と擾乱がハイゼンベルクの下限ラインを下回ることを実証した。小澤の式は問題なく成立し,誤差と擾乱の不確定性関係の式は書き換えられた。

 

 一方で新たな疑問が浮上した。その1つは小澤の式の下限ラインに到達できるか,つまり式の等号が成立することがあるかどうかだ。小澤の式は導出過程でいくつもの不等式を用いているため,制限が緩い。誤差と擾乱を「これ以下に小さくできない」のは確かだが,「ここまで小さくすることは可能だ」と言えるだろうか? 昨年4月,その答えが出された。オーストラリアのクイーンズランド大学のブランシアード博士が,等号が成り立ち得る新たな不確定性関係の式を見いだしたのだ。(続く)

 

続きは現在発売中の3月号誌面でどうぞ。

 

再録:別冊日経サイエンス199「量子の逆説」

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