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絶対的な絶対温度~日経サイエンス2013年12月号より

温度の絶対尺度に対する探求が熱を帯びている

 

 既知の宇宙で最も正確な温度計は,温度計とは似ても似つかないものだ。それは大きめのメロンぐらいの銅製の容器で,内部は超高純度のアルゴンガスで満たされ,マイクロホンとマイクロ波アンテナが散りばめられている。英テディントンにある英国立物理学研究所(NPL)の構内に設置されたこの装置の目的は単に温度を測定することではない。こうした装置によって,科学者は温度の概念を徹底的に見直し,基礎物理学の用語で再定義しようとしている。

 

 物理定数を介して温度をエネルギーに関連づけようという計画だ。温度の国際標準単位であるケルビンは現在,水の特性に基づいているが,科学者たちはこれを他の測定単位と同様,マクロ世界の気まぐれから解放されたものにしたいと考えている。秒は現在,セシウム原子の振動によって定義され,メートルは真空中の光の速度に関係づけられている。「ケルビンが温度とエネルギーを直接に関連づけていないという現状はばかげている」と,研究チームを率いるデポデスタ(Michael de Podesta)はいう。

 

 鍵はボルツマン定数の精密測定に

 NPLの装置はボルツマン定数を測定する。ボルツマン定数はエネルギーの変化を温度の変化に関連づけるものだ。デポデスタのチームとそのライバルたちは,この定数を十分に詳しく測定して,1ケルビンが何ジュールのエネルギーに対応するかを関連づけられるようにしたいと考えている。

 

 この新しい温度計は専門的には「音響共振器」といい,ある振動数の音をマイクロホンに入力すると,ベルのように鳴る。この音響共振から,ガスで満たされた共振器内の音速が特定でき,ひいてはアルゴン分子の平均速度,つまり分子の運動エネルギーがわかる。デポデスタのチームは7月,Metrologia誌にこれまでで最も正確なボルツマン定数の測定値を報告した。(続く)

 

続きは現在発売中の12月号誌面でどうぞ。