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宇宙の偏りは本物か~日経サイエンス2013年12月号より

背景放射の偏りを示すデータが続いている

 

 10年前,宇宙論研究者たちは宇宙が奇妙に偏っているのではないかと疑い始めた。この宇宙の不均衡に関する兆しは,宇宙マイクロ波背景放射(CMB)として知られるビッグバンの残光に現れたものだ。マイクロ波背景放射には温度の高い点と低い点があり,これは物質密度のゆらぎを示している。

 

 2003年以降,米航空宇宙局(NASA)のウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機WMAPによるデータから,宇宙の片側が他方よりも高温であることが示唆された。だが,この発見は宇宙論の主流となっている見方に反する。この見方によれば,宇宙はインフレーションと呼ばれる初期成長の際にとてつもないスピードで膨張したので,マイクロ波背景放射はほとんど均一に見えるはずだ。

 

 ここ数カ月で偏りの証拠はさらに強まっている。WMAPよりも新しく感度の高い欧州宇宙機関(ESA)のプランク衛星もまた,宇宙の非対称性を示す信頼できる証拠を送り返してきたのだ。いま問題となっているのは,この謎が宇宙の再考を必要としているのか,あるいは,極めて起こりにくいものの最終的には既存の考え方で説明がつく出来事なのかだ。

 

既存の理論で説明可能?

 

 「WMAPの公開データを解析した複数の研究結果に基づく以前からの主張に加え,今回のプランク衛星のデータは説得力のあるダメ押しとなった」と,カリフォルニア州パサデナにあるNASAジェット推進研究所の宇宙論研究者ゴールスキー(Krzysztof Gorski)はいう。

 

 この驚くべき温度の違いについての信憑性は高まったかもしれないが,いまだに謎であることに変わりはない。オスロ大学の宇宙論研究者ファンタイ(Yabebal Fantaye)はゴールスキーらとともに最近,宇宙進化の標準的理論を前提とするとマイクロ波背景放射がどのように見えるはずなのか,1万例のシミュレーションを実施した。その結果,WMAPがまとめたイメージに似た結果になったのはわずか7例にすぎなかったとAstrophysical Journal Letters誌に報告した。言い換えると,標準的な宇宙論でも不均衡な宇宙は許容されうるが,かろうじてということだ。「確かに起こりうるのだが,確率は非常に低い」とファンタイはいう。(続く)

 

続きは現在発売中の12月号誌面でどうぞ。

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宇宙論