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プラナリアの記憶~日経サイエンス2013年12月号より

頭を切断された後も周囲の環境を覚えている

 

 扁形動物のプラナリアは神経科学界の人気者だ。中枢としての脳を持ち,複雑な感知能力と素早い再生力を備えたこの非寄生性の蠕虫は,幹細胞や神経の発達,手足の再生を調節しているメカニズムの研究に理想的だからだ。

 

 最近,こうした特殊能力のレパートリーに新項目が加わった。この無脊椎動物は,脳の外に記憶を保存しておいて,頭を切除した後に新たな頭が生えてからも,それを呼び戻すことができるのだ。

 

学習後に頭を切断

 タフツ大学の研究者たちはプラナリアの記憶回復力を試すのに,この蠕虫に特有な奇妙な行動を利用した。勝手知った場所にいるプラナリアは,見知らぬ新しい環境に置かれたときよりも素早く餌を食べるのだ。新環境に置かれたプラナリアは餌を食べる前に,まず周囲を探索して安全を確認する時間が必要となる。

 

 そこで研究チームは表面に細かな凹凸をつけたシャーレにプラナリアを入れ,その環境を熟知させた。次に頭を切断し,新しい頭が生えてくるまで2週間待った。その後,プラナリアを短時間もとのシャーレに戻して餌を与え,記憶を呼び起こさせた。よく知った場所に短時間戻すことで,身体に眠っている記憶を呼び戻そうというアイデアだ。

 

 「プラナリアにとって,まるで役に立たないかもしれない古い記憶を新しい脳組織に自動的に刷り込むのは無駄だろう。これに対し,もとのシャーレを短時間経験させれば,その記憶が確かに有意義なものであるとわかる」と,論文を共著したタフツ大学の発生学者レヴィン(Michael Levin)はいう。

 

 こうして訓練したプラナリアを同じシャーレに戻したところ,頭を切断する前にシャーレを探索した経験のないプラナリアに比べてずっと早く餌を食べ始めた。(続く)

 

続きは現在発売中の12月号誌面でどうぞ。