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昆虫が促進する草地の炭素吸収~日経サイエンス2013年11月号より

予想外に複雑な仕組みが存在するらしい

 

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 炭素循環は地球上の生命体にとって欠かせないものだが,科学者たちはいまだにその複雑さを理解しきれていない。これまでに行われた研究のほとんどは,森林破壊や化石燃料の利用など,温室効果ガスである二酸化炭素の主要発生源に焦点を当てたものだった。

 

 だが最近,一部の科学者は植物と動物の相互作用など,より目立たない要因を調べ始めている。ある新しい研究から,直観に反した結果が導かれた。捕食動物と草食動物がいる場所に生えている植物のほうが,それらがおらず食べられたり踏みつぶされたりする可能性が低い植物よりも,多くの炭素を蓄積するらしい。

 

 エール大学の生態学者シュミッツ(Oswald Schmitz)らは植物界と動物界の相互作用を探るため,3つの草地環境を作って囲った。草地の植生だけのもの,そこに草食動物であるバッタを加えたもの,そしてバッタと肉食性のクモを加えたものの3つだ。この結果,草食動物と肉食動物の両方がいる3番目の環境の植物が,バッタだけがいる環境の植物よりも炭素を40%多く蓄積することがわかった。

 

 クモはバッタを食べるので,バッタが自由勝手に草を食べている環境に比べると植生が食われる量が抑えられ,植物により多くの炭素が蓄えられるだろうというのは,直観的に理解できる。だが驚いたことに,バッタとクモの両方がいる環境の植物は,どちらもいない隔離環境の植物と比べても炭素の蓄積が20%多かった。「草食動物も捕食動物もいない環境の植物で炭素蓄積量が最大になりそうなものだが,そうではないのだ」とシュミッツはいう。彼はこの研究の共著論文を6月に米国科学アカデミー紀要に発表した。(続く)

 

続きは現在発売中の11月号誌面でどうぞ。

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