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マンモスの血液チェック〜日経サイエンス2013年10月号より

液体の血液がなぜ残っていられたのか?

 

 最近,ロシアの研究チームが驚きの発見を発表した。1万年前のマンモスの死骸に−17℃でも凍らない血液が残っていたという。シベリアンタイムズ紙は,研究を率いた北東連邦大学(ヤクーツク)のグリゴリエフ(Semyon Grigoriev)が,この血液が「一種の天然の凍結防止剤」を含んでいると考えていると報じた。一方でAFP通信は,「この発見は生きた細胞を見つける絶好のチャンスだ」というグリゴリエフの発言を伝えている。生きた細胞が見つかれば,彼らが取り組むマンモスのクローン作りを目指す国際プロジェクトにとって願ってもない恩恵となるだろう。

 

 私はできすぎた話ではないかと思った。だが,私が意見を聞いた専門家によると,このマンモスは本当に驚くべき発見だ。ただし,伝えられている主張の一部は疑わしい。

 

 「彼らは“生きた細胞”は発見していない。せいぜい期待しうるのは,クローンマンモス作りに熱心な人たちが“生きたDNA”と呼ぶものを含んだ細胞までだろう。クローニングに使える保存状態のよいDNAのことだ」と,ミシガン大学のフィッシャー(Daniel Fisher)は説明する。そのうえで,「一般に太古のDNAは非常に断片化しているので,マンモスの胎仔実現には程遠い」と注意する。

 

 マニトバ大学(カナダ)のキャンベル(Kevin Campbell)は,マンモスの血液が−17℃でも凍結せずに循環できたというのは疑問だという。保存中に凍結防止剤が濃縮し,これが解析用のサンプルに混入したのだとみる。あるいは,凍結防止物質を分泌する細菌がサンプルに混入したのかもしれないという。

 

 クローン作りに関しては,フィッシャーは他に優先すべき研究があると考える。「マンモスの生態について知りたいなら,クローンよりも化石から知識を得るのが順当で確実だと思う」とフィッシャーはいう。■

 

この記事はSCIENTIFIC AMERICANのブログ「オブザベーションズ」(blogs.ScientificAmerican.com/observations)より。

 

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