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泡の物理学〜日経サイエンス2013年9月号より

気泡集合体の複雑な変化を記述する数理モデル

 

THOMAS FUCHS

 誰でも石鹸の泡の美しさに一度や二度は目をとめたことがあるはずだ。この虹色のはかない球は消えてなくなるまでの数分間に,シャボン玉を吹く子供や浴槽のなかで深く思索した人の目を奪ってきた。

 

 物理学者と数学者も同じで,基本的なレベルで泡の特性を理解・予測しようと何百年も努力してきた。特に泡の集合体は数学的に興味深い。一連の幾何学的な規則に従っているほか(例えば個々の気泡の表面が互いに接する角度は決まっているなど),一種のコンピューターとして振る舞って,ある最適化問題(泡の表面積をいかに最小化するか)を解くために移動と再配置を常に繰り返す。

 

 最近,気泡の集合体(発泡体)の振る舞いを記述する新たなコンピューターモデルが開発された。泡の物理学をこれまで以上に扱いやすくなり,優れた難燃材や自転車のヘルメットなど,発泡体を基本とする製品の改良につながる可能性がある。

 

3段階に分けて記述

 カリフォルニア大学バークレー校の2人の数学者が考案したこの新モデルは,発泡体の変化を3つの段階に分ける。第1段階は,表面張力と空気の流れによって個々の気泡が動かされ,泡の集合体の巨視的構造が再配置されて安定した構造になる過程だ。次に,個々の気泡を包んでいるラメラという薄膜から液体が流れ出て,気泡を保つだけの力のないラメラが生じる。最後に第3段階として,その薄くなったラメラが壊れて気泡が破裂し,泡全体の平衡が失われて,第1段階に戻って一連の過程が繰り返される。この研究結果はScience誌5月10日号に掲載された。

 

 これら3つの段階が展開する空間・時間スケールはそれぞれ異なる。例えば気泡のラメラが薄くなる空間的に小さな変化は非常にゆっくりしていて,数百秒かかることもあると,論文を共著したカリフォルニア大学バークレー校の数学教授セシアン(James Sethian)は説明する。そして,薄くなったラメラの破裂は「秒速数百mの高速で起こる」。発泡体の動力学をシミュレートするうえでの障壁のひとつは,あまり重要ではない詳細にはまりこむことなく,小スケールで起こっているプロセスについて必要な詳細をとらえることだ。(続く)

 

 

続きは現在発売中の9月号誌面でどうぞ。

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