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「メス,いや,ブロートーチを」〜日経サイエンス2013年8月号より

無血手術を可能にするプラズマメスに期待

 

 医学でプラズマといえば,ふつうは血液の液体成分,血漿のことを指す。だが最近,星や稲妻に見られるプラズマ(固体,液体,気体に次ぐ物質の第4の基本状態)をうまく利用して,ブロートーチのように人体を切って無血手術を行う方法が研究されている。

 

 外科医たちは20世紀初めから,プラズマを使ってイボなどの悪性組織を切除してきた。20世紀後半になると,工業用のプラズマカッターが1960年代から金属を切断してきたのと同様に,プラズマジェットで人体を切り分ける方法が研究されるようになった。こうしたプラズマメスは切ったそばから組織を焼灼することになる。「ライトセーバーのようなものだ」というのは,初期のプラズマメスを発明したワシントンの外科医キャナディ(Jerome Canady)だ。

 

 内出血はときに致命的なので,その防止は救命につながる可能性がある。輸血が最小限ですむ点も重要で,戦場では特にそうだ。米国特殊作戦軍は2008年にプラズマメスの実地試験を行った。

 

切れ味鋭く治療効果も

 プラズマメスはアルゴンなどのガスを加圧し,細い経路を通じて流す。ガスは経路で電荷を獲得し,時速2400km以上で噴出してプラズマの刃となる。メスに使われるプラズマは比較的低温で,直接に触れた組織は焼灼されるが,周囲の細胞の温度は36℃ほどにしか上がらない。また「外科用メスの刃よりも鋭い」とキャナディはいう。「従来のメスでは切り口から0.4~0.8mmが巻き添えになって傷つくが,プラズマメスなら0.1~0.2mmにとどまる」。

 

 また,プラズマに熱を加える以上の治療効果があるらしいこともわかってきた。電気的に中性な空気中の酸素分子と窒素分子がプラズマによって電気を帯び,それらの分子がオゾンと窒素酸化物を形成して,細菌やがん細胞を死滅させることができる。(続く)

 

 

続きは現在発売中の8月号誌面でどうぞ。

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