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すばる望遠鏡,新たなる挑戦〜日経サイエンス2013年8月号より

次世代望遠鏡計画とすみ分け,観測の国際連携を加速

 

 米国ハワイ島・マウナケア山頂(標高4200m)にある国立天文台の「すばる望遠鏡」が生き残りをかけた戦いに挑んでいる。次世代の30メートル望遠鏡計画(TMT=Thirty Meter Telescope)の具体化に伴い,TMTとのすみ分けを求められている。予算や人的資源の制約も大きい。運用コストの削減を狙って,アジア諸国との共同運用を視野に入れる。有本信雄・国立天文台ハワイ観測所長は「日本の望遠鏡ではなくなる」とまで言い切る。

 

 すばる望遠鏡は有効口径8.2mの主反射鏡を備えた世界トップ級の可視光赤外望遠鏡で,1999年のファーストライト以来,宇宙最遠方の銀河や宇宙の大規模構造の観測,太陽系外の原始惑星系円盤の発見など数えきれない成果をあげてきた。

 

 とりわけ,すばるの特徴の主焦点カメラ(Suprime-Cam)は広い視野(満月とほぼ同じ大きさ)と高解像度によって,天空の広い範囲を能率よく観測できる。建設当時は主焦点に観測機器を置くことに対し,欧米の研究者からは懐疑的な声も聞かれたが,結果的には主鏡の高精度さと相まって,遠方銀河の探索などに威力を発揮してきた。

 

 そのすばる望遠鏡に転機が訪れつつある。国立天文台が米カリフォルニア大学やカリフォルニア工科大学,カナダ大学連合などとの国際協力で,すばると同じマウナケア山頂に建設を計画中の次世代望遠鏡TMTが着実に実現に近づいている。口径30mのTMTは8m級のすばるに比べて解像力で約4倍,集光力で約10倍とされ,観測能力が格段に違う。

 

 2020年代初頭にTMTが完成すると,同じ場所にある2つの望遠鏡で観測上の使い分けをしなければならなくなる。また国の財政事情などを考えれば,ハワイ観測所の予算や人員が大きく増えることは見込み薄なため,すばる望遠鏡の運用の簡素化と経費負担の軽減がこれから強く求められるのは確実だ。すでに国立天文台のすばる小委員会は昨年,今後10年をにらんだ報告書「2020年代に向けたすばるの戦略」をまとめている。(続く)

 

 

続きは現在発売中の8月号誌面でどうぞ。

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