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今秋,天の川銀河中心に注目〜日経サイエンス2013年7月号より

早ければ今秋,天の川銀河中心の超巨大ブラックホールにガス雲が最接近する

 

       齋藤貴之(シミュレーション)。武田隆顕(可視化)

 私たちの天の川銀河の中心には超巨大ブラックホールが潜んでいる。今秋から来春にかけて,そのブラックホールにガス雲が最接近することが明らかになった。東京工業大学や国立天文台などを中心とする研究グループのシミュレーションによると,最接近の際,ガス雲は強く圧縮されて高温になり,急激に輝きを増す可能性がある。本当にそうしたことが起きるのか,世界各地の大型望遠鏡による観測が行われる予定だ。

 

 天の川銀河は直径約10万光年の渦巻銀河で,その中心は地球から見て「いて座」の方向,約2万6000光年の彼方にある。星やガスが集まる中心部には超巨大ブラックホールがあり,「いて座A(エー・スター)」という電波天体として認識されている。ブラックホールの周囲にはガスと塵からなる円盤があり,円盤の軸方向には超高速で噴出するジェットが存在するとみられ,そうした円盤やジェットのいずれか,または両方から強い電波が放射されていると考えられている。

 

 1990年代,いて座A周辺領域の観測から,複数の恒星がいて座Aを周回していることが判明,S1,S2などという名前が付けられた。そうした恒星の中には,ブラックホールの強大な重力のため超高速で運動しているものもあり,例えばS14という恒星は,いて座Aに110天文単位(1天文単位は太陽・地球間の距離。太陽・海王星間は30天文単位)まで接近する際,秒速約8000kmに達するとみられている。それら恒星の軌道運動の精密測定から,いて座Aは太陽約430万個分もの質量を持つことがわかった。

 

 2002年,こうした恒星を観測中,1つのガス雲が発見され,G2と名付けられた。G2は差し渡しが数百天文単位,推定総質量は地球の3倍程度だった。2012年1月,独マックス・プランク研究所を中心とするグループはG2の追跡観測から,G2がS14などと同様,いて座A*の重力にとらわれて運動していること,2013年夏,いて座A*に約270天文単位のところまで最接近することを明らかにした。その後,同グループは観測データを積み増し,最接近は秋になると報告。ハワイ島にあるケック望遠鏡を用いた別の観測グループは最接近は来春との推定結果を最近発表している。(続く)

 

 

続きは現在発売中の7月号誌面でどうぞ。

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