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吸い殻を活用する鳥〜日経サイエンス2013年5月号より

巣に持ち込んでヒナ鳥を守っている

 

Ciggie

 鳥のヒナをタバコの吸い殻だらけの巣で育てるなど恐ろしいアイデアに思えるが,ある最近の研究によると,吸い殻から取り出した樹脂製フィルターを巣に織り込むと一部の鳥にはメリットがあるらしい。フィルターに残るニコチンが天然の殺虫剤となって,巣やヒナを寄生虫などの有害な虫から守っている可能性があるという(そもそも植物のタバコがニコチンを作り出すのは,タバコの葉を食べようとする昆虫から身を守るためだ)。

 

 吸い殻は間違いなく悪臭がする。だが鳥は芳香性の植物などが放つ匂いの強い化学物質をむしろ好む。巣を作る鳥のなかには,巣に新鮮な芳香性植物を定期的に補充するものもいる。おそらく,その化学物質がヒナの免疫系を強化したり成長を促進したりするからだろう。あるいは,植物の化学物質が殺虫剤として機能している可能性もある。

 

 

Ciggie / katielips

寄生虫を撃退

 メキシコのトゥラスカーラ自治大学の研究グループは,メキシコシティにある鳥の巣55個に寄生虫を引き寄せるヒートトラップを取り付けた。一部のトラップは吸い殻のフィルターの綿で内張りし,その他はニコチンなど喫煙の副産物がついていない未使用のフィルターから取った綿で内張りした。巣に卵やヒナがいても空っぽでも,未使用タバコのトラップにはより多くの寄生虫が集まった。タバコのフィルターに含まれる化学物質が寄生虫を追い払っていることを示している。

 

 次の実験では,ヒナが巣立ったばかりのイエスズメの巣28個とメキシコマシコの巣29個をメキシコシティで集めた。この結果,吸い殻のフィルターの綿がたくさん敷き詰められている巣ほど寄生虫が少ないことがわかった。

 

 ただし,巣の寄生虫が少なくなったことでヒナが実際にどんな恩恵を被ったのかは不明だ。ニコチンのほかシアン化水素,ヒ素,アンモニアなど,タバコに含まれる化学物質が巣から寄生虫を追い払っているのかどうかも明確ではない。

 

 この結果が確かなら,野生生物が都市化に適応した実例といえる。少なくとも,鳥が工夫の才に富んでいて,都市環境のなかで鼻を利かせて生きている証拠だ。■

 

この記事はSCIENTIFIC AMERICANのブログ「カルチャリング・サイエンス」(blogs.ScientificAmerican.com/culturing-science)より。

 

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