News Scan

スリンキーの数理物理学〜日経サイエンス2013年5月号より

一連の実験で「過湾曲」に新たな理解

 

 キャンプ好きと意欲あふれる現代彫刻家はご注目あれ。最近,過湾曲(オーバーカーバチャー)の理解と制御において飛躍的な前進があった。過湾曲はポップアップ式のテントやDNAプラスミド,折り紙など様々なものに見られる。輪を極端に曲げた結果,ふつうのリングが平面上に置けるのとは違って,もはや平面には収まらなくなった場合,それが過湾曲だ。

 

 例えば,ばね状おもちゃ「スリンキー」の一部を切り出して,その両端をつなげて閉じた輪を作ったとしよう。この輪を広げて全体を床の上に平らに置くのは,ひどく難しいだろう。スリンキーにもとから備わっていた歪みによって輪が曲がり,3次元の鞍形になってしまうだろう。

 

 実際,昨年の12月にNature Communications誌に発表されたこの研究ではスリンキーが大きな役割を果たした。研究チームは様々な大きさと材質の過湾曲リングを観察した後,ある一群のリングについては,それらが空間内で取る形をかなり単純な数式で表現できると考えられることを発見した。これを確かめるため,プラスチック製スリンキーの一部を切り出して作った輪で実験したところ,それらの輪はまさに予測通りの形を取った。

 

 「本当に驚いた」と,この研究を率いたルーヴェン・カトリック大学(ベルギー)の材料科学者ジョナス(Alain Jonas)はいう。「実際にぴったり一致するのを目の当たりにしたのだから」。

 

効率的な折りたたみ方

 この論文はポップアップ式テントなどの過湾曲リングを折りたたむ効率的な方法についても述べている。一例として,1つの輪を三重のループにたたむ方法を示す。まず,輪の両側を左右の手でそれぞれつかむ。輪を持ち上げながら両手を近づけていき,両端が合わさったらそこを片手でつかむ。空いたほうの手を使って左右を互い違いに丸め込む。上と下の両方で,片方の端を他方の上へ押し込み,全体をまとめてつぶす。

 

 この提案は人々が通常やっている方法とは異なる。最初はより多くのエネルギーが必要になるが,全体としては少なくてすむ。「実際にやってみてもそんな感じはしないが,物理的には確かにそうなる」とジョナスはいう。研究を終えた後,ジョナスは友人からテントを借り,自分たちが開発した折りたたみ方を実行してみた。うまくいった。■

 

ほかにも話題満載! 現在発売中の5月号誌面でどうぞ。

サイト内の関連記事を読む