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羽のある発明家〜日経サイエンス2013年4月号より

オウムで道具作りが初めて観察された

 

 1960年代初期にチンパンジーが「道具を使う生き物」の仲間入りを果たして以来,その顔ぶれはどんどん増えてきた。現在ではゾウ,イルカ,カラス類,カケス,ディンゴ,イヌ(の仲間)にまで広がっている。鳥類ではカラス科の鳥が道具を使うことがよく知られているが,その他の科の鳥については確実な証拠は乏しい。

 そんななか,フィガロという名前のオウムが,仲間のシロビタイムジオウム(Cacatua goffini)に“道具使い生物クラブ”への入会の道を開いたようだ。フィガロはウィーン大学の認知生物学科で飼われているオウムの1羽だ。

 ある日,このオスのオウムが鳥小屋の金網の隙間から小石を落とし,小石が木製の梁の上で止まった。フィガロは脚の爪でその小石を取ろうとしたが失敗。業を煮やしたフィガロはいったん飛び去り,どこかから小さな竹の棒を持ってくると,くちばしでそれを挟んで動かし,小石を引き寄せようとした。これもうまくいかなかった。しかし幸いなことに,ある学生がこの興味深い行動に気づき,研究室のスタッフに報告した。野生のシロビタイムジオウムが道具を使うという記録は皆無だったので,この行動は画期的といえた。

 

まぐれじゃありません

 だが,まぐれではないのか? この点を確かめるため,鳥小屋の外の木の梁に小さなカシューナッツを置き(最初の観察例で小石が梁に落ちたのと同じ配置),フィガロの行動を観察した。3日間に10回の実験を行った。

 最初の実験では,フィガロは鳥小屋の床にあった棒を使おうとしたが,その棒は短すぎた。そこでフィガロは木製の梁をつついて壊し,その破片をくちばしで持って,ナッツをうまく引き寄せた。ナッツ入手までにかかった時間は合計25分。既存の道具を使うだけでなく,自分で道具を作り出したわけだ。2回目以降の実験では,作業がかなりスピードアップした。10回とも,フィガロは道具を見つけるか作るかして,ナッツの入手に成功した。

 特に興味深いのは,フィガロがカラス科の鳥ではなくオウムであるという点だ。カラスの仲間は,巣作りのために,くちばしを使って小枝を細工することを日常的に行っているので,道具を作ることを思いついても解剖学的・生態学的に不思議ではない。これに対しオウムは木の幹に開いた自然の穴に巣を作る。フィガロの例は,道具使用の知能が進化によって形成されたわけではない個体でも,道具の使用が自発的に生じうることを示している。(続く)

 

この記事はSCIENTIFIC AMERICANのブログ「ソートフル・アニマル」(blogs.ScientificAmerican.com/thoughtful-animal)より。

 

 

続きは現在発売中の4月号誌面でどうぞ。

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