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寄生虫の卵は優れた腹薬〜日経サイエンス2013年4月号より

腸炎を静める効果が確認された

 

 腸のトラブルは人間に限らない。飼育下のアカゲザルは人間の自己免疫疾患である潰瘍性大腸炎に似た慢性下痢を起こすことがよくある。最近,これらのアカゲザルがサルとヒトの両方におけるこの病気の治療に新たな手がかりをもたらしつつある。その治療法とは蠕虫(ぜんちゅう)だ。

 

 小規模な臨床試験の結果,炎症性腸疾患(IBD)の患者に豚鞭虫の卵を与えると症状が緩和する場合があることがわかった。寄生蠕虫が蔓延している途上国で炎症性腸疾患が少ないのは,蠕虫が何らかの効果をもたらしているためかもしれない。ただし,これら蠕虫の存在がなぜよいのか,その理由は解明途上だ。

 

 ニューヨーク大学メディカルセンターの微生物学の助教ローク(P’ng Loke)らは新たな研究のため,特発性(原因不明)の慢性下痢を発症している若いアカゲザルを5匹選んだ。それぞれにヒト鞭虫(Trichuris trichiura)の卵1000個を与えたところ,5匹中4匹が好転し,体重が戻った。PLOS Pathogens誌オンライン版に発表。

 

腸内細菌のバランスが回復?

 病気のサルたちの大腸の粘膜には異常なまでに高い割合で細菌が付着していたが,処置の後には大腸内の細菌集団がかなり変化していた。蠕虫にさらされることで,腸内の細菌集団のバランスが回復した可能性を示している。

 

 寄生虫の卵の存在によって腸の内壁を覆っている上皮細胞が回復するとともに,粘液の分泌が増えて治癒が進んだのだろうと研究チームは推測している。こうした変化は腸の内壁にくっつく細菌の量を抑え,過剰な免疫反応が起こるのを防ぐのに役立った。

 

 ロークらは現在,潰瘍性大腸炎を豚鞭虫の卵によって治療する臨床試験に取りかかっている。試験が成功して豚鞭虫の卵が市販されるようになったら,鞭虫の卵ではなく腸内善玉菌向けのキャビアだと思って食べることだ。■

 

 

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