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RNAの意外な働き〜日経サイエンス2013年2月号より

DNAからタンパク質への中間生成物ではなく,自ら遺伝子発現を制御している

 

 ヒトのDNAを構成する約30億対の塩基のうち,タンパク質を作る遺伝子を構成しているものは,わずか1.2%だ。残りの部分は,これまで「ジャンク(がらくた)DNA」と,まるで何の役にも立たないかのような名前で呼ばれてきた。だが最近の研究から,このジャンクDNAが生体内で重要な機能を果たしていることがわかってきた。遺伝子をいつ,どこで発現するかを決める調節因子を作っていることが明らかになってきたのだ。その主力と目されているのが,「ノンコーディングRNA」と呼ばれる,タンパク質を作らないRNAだ。

 

 去る9月,ジャンクDNAについての従来の見方を塗り替える報告があり,専門家らの注目を集めた。2003年よりゲノムDNAの塩基配列をしらみつぶしに調べ,その構造と機能を解明する国際プロジェクト「ENCODE計画」の共同チームが,その結果を発表したのだ。それによると,ヒトのゲノムのDNAを構成する塩基配列のうち最小でも9%,最大で80%もの領域が,何らかの機能を果たしているという(「もうジャンクとは呼ばせない」参照)。

 

 80%というのは,DNAからRNAへの転写が起きている塩基配列と,タンパク質が結合するDNAの塩基配列などを合わせた数字だ。うちほとんどを前者が占める。RNAは従来,DNAからタンパク質が作られる過程でできる中間生成物(これをメッセンジャーRNAと呼ぶ)だと考えられてきたが,それだけではない。タンパク質に翻訳されない「ノンコーディングRNA」がそれ自体で生体内で一定の機能を担っていることが徐々に明らかになりつつあり,生物学研究のホットトピックになっている。

 

意外な働き者

 ノンコーディングRNAの少なくとも一部は,遺伝子のDNAやそこから転写されたRNAに働きかけ,遺伝子が働くタイミングや,合成するタンパク質の量を制御している。

 

 2012年10月,理化学研究所のカルニンチ(Piero Carninci)チームリーダーらのグループはイタリア国際高等研究所(SISSA)と共同で,ある種のタンパク質の合成量を増やす働きを持つノンコーディングRNAを発見した。もとになるDNAからタンパク質を作るメッセンジャーRNAが転写される際,これと一部を共有する形で,別のノンコーディングRNAが作られる。このノンコーディングRNA がメッセンジャーRNAをタンパク質合成装置であるリボソームに運ぶため、タンパク質の合成量が増えるという。(続く)

 

続きは現在発売中の2月号誌面でどうぞ。

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