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ヒッグス粒子の実像追求続く〜日経サイエンス2013年2月号より

世界最強の加速器LHCの実験が進み

万物に質量を与える粒子の輪郭がより明らかになってきた

 

 素粒子研究の国際会議「Hadron Collider Physics Symposium2012」が11月12~16日に京都大学で開かれ,万物に質量を与えるヒッグス粒子に関する最新の実験結果が報告された。

 

 ヒッグス粒子は,素粒子物理学の枠組み「標準モデル」で存在が予言されながら発見されていなかった唯一の素粒子だったが,去る7月,スイス・ジュネーブ近郊の欧州合同原子核研究機構(CERN)にある世界最強の加速器LHCでの陽子衝突実験で「ヒッグス粒子とみられる新粒子」の発見が報告された。LHCでは,それ以降も実験が続いており,データが蓄積するにつれて新粒子のより詳しい情報が得られつつある。

 

 7月時点と比べてデータ量が約1.6倍(約1800兆回の陽子衝突)になった京都での発表を総括すると「新粒子は,標準モデルが予言するヒッグスの特性と合致する傾向にあることが強まったが,完全に合致するかどうかはまだわからない」というものだった。

 

標準モデルとの一致度は?

 報告したのはLHCでヒッグスを探索している国際共同実験グループATLASとCMS。日本はATLASの主要メンバー国だ。両グループが発見した新粒子の質量はエネルギー換算でATLASが126GeV(GeVは10億電子ボルト。陽子の質量は約1GeV),CMSが125.8GeVで,よく一致する。

 

 現在の関心は新粒子の性質が標準モデルが予言するヒッグスと完全に一致するかどうか。実験結果と標準モデルとの一致度はμ(ミュー)というパラメーターで表される。ヒッグスは生成された直後,別のより軽い粒子へと崩壊する。LHC実験では5パターンの崩壊が観測対象となるが,標準モデルでは,それらパターンに崩壊する頻度が精密に決まっている。そこで標準モデルの崩壊頻度を1として,実験で観測された崩壊頻度を表したのがμだ。

 

 それらの崩壊パターンすべてについてμがきっかり1なら,新粒子は標準モデルが予言するヒッグスそのものであることになる。一方,いくつかの崩壊パターンについてμが1より小さかったり,大きかったりすれば,それは標準モデルを超える「超対称性理論」の片鱗が見えている可能性が高い。(続く)

 

続きは現在発売中の2月号誌面でどうぞ。

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