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ちょうどよいギター〜日経サイエンス2012年12月号より

厚さ68mmが最高の響き 

 

 神奈川工科大学の電気工学者,板子一隆(いたこ・かずたか,電気電子情報工学科教授)は6歳からギターを弾いている。板子哲(さとし)は電気工学の修士号を持つギター製作者だ。2人は兄弟で,最適なギターの形を研究している。

 

 バイオリンの最適形状に関しては複数の専門家が多くの問題を解決してきたが,ギターについてはほとんど研究されていない。5月に香港で開かれた音響学会「アコースティクス2012」で発表された板子兄弟の予備的研究は,1つの変量に注目した。ギターの厚さだ。形はほとんど同じで厚さだけが異なる4台のギター(厚さは58mmから98mmまで)を製作した。

 

 この4台について演奏者に2種類の異なる奏法で開放弦を弾いてもらい,その音質と倍音を客観的基準と主観的基準の両方で評価した。倍音(周波数が基音の整数倍の音)の測定に使ったのは客観的な基準,オシロスコープだ(純粋な波形は1つの周波数しか含んでいないが,無機的で不自然に聞こえる。倍音が多く含まれるほど,音質は豊かになる)。これに加え主観的基準として,音楽的に耳の肥えた9人に音質を評価してもらった。

 

 厚さ68mmのギターは倍音が最も豊かで,9人の評価者のうち6人が最高と評価した。板子兄弟は現在,響孔の大きさによって音質がどう変わるかを調べている。その後,ガラス繊維などの合成材料で木製ギターと同じ響きのよい楽器を作れるかどうかを突き止める計画だ。木製ギターは製作に細心の注意を要し,時間がかかる。

 

 兄弟の目標はプロレベルに準ずる高品質のギターのための理想的な寸法と材料を特定すること。実現すれば,より多くのアマチュア演奏家が優れたギターを手ごろな価格で入手できるようになるだろう。

 

 

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