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魚のディナーデート〜日経サイエンス2012年11月号より

もてないオスはごちそうでメスを誘う

 

 すてきなディナーをおごっても彼女を口説き落とせるとは限らないが,ある魚の場合,オスがおいしそうな疑似餌を使ってメスをかなり確実にものにしているらしい。カギは,その地の“名物料理”に似せた疑似餌で誘うこと。そうすればメスをひっかけられる。

 

 トリニダード・トバゴ共和国のトリニダード島の川にいるソードテール・カラシン(Corynopoma riisei)という魚は近くの草木から川面に落ちた不運な虫を主な餌としている。川が森のなかを流れている場合,樹上に生息していたアリが主食となる。

 

 カラシンは魚としては異例なことに体内受精をする。だがオスのカラシンにとってサイズは重要ではない。そもそもメスの体内に挿入する器官がないのだ。それでも,何とかしてメスの体内に遺伝物質を送り届ける必要はある。いったいどうするのか? 進化の過程で導き出された解決策が,釣り糸と疑似餌だ。長い年月をかけて,オスのカラシンはエラの近くから伸びる細いひもを発達させた。ひもの先端には飾りのようなものがついている。メスがその飾りに食いつくと,オスに十分に近づいて,交配に都合のよい位置関係になる。

 

 だが,オスの疑似餌の見かけはどれほどの意味があるのだろうか? スウェーデンにあるウプサラ大学のコルム(Niclas Kolm)が率いる研究チームは,アリを食べて育ったメスはアリに似た疑似餌を使うオスにひっかかる率が高いことを発見した。(続く)

 

 

 
再録:別冊日経サイエンス233「魚のサイエンス」

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