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善玉コレステロールが悪玉に〜日経サイエンス2012年11月号より

ある小さなタンパク質が性質を変えるようだ

 

 いわゆる善玉コレステロールである高比重リポタンパク質(HDL)がそれほどよいものではないという話は数年前から聞かれるようになった。最近の研究で,一部のHDLは実は“悪玉”であって,冠動脈性心疾患のリスクを高める可能性があることが示された。

 

 悪者の正体は,ある低分子のタンパク質らしい。アポリポタンパク質C-Ⅲ(アポC-Ⅲ)という小さな炎症性タンパク質がHDLの表面についていると,健康な男女における心疾患のリスクが約2倍になる可能性があると,ハーバード大学公衆衛生学部の心血管疾患予防学の教授サックス(Frank Sacks)はJournal of the American Heart Association誌4月号に掲載された共著論文で述べている。反対にアポC-ⅢがついていないHDLは心臓を保護する働きが特に強いらしいことがわかった。

 

 すでにいくつかの研究から,悪玉コレステロールとされる低比重リポタンパク質(LDL)の表面にアポC-Ⅲがついている場合は動脈壁へのプラーク蓄積が生じやすくなって特に有害であることがわかっていたが,今回初めて,HDL上のアポC-Ⅲにも同様の作用があることが健康な被験者を対象にした大規模な前向き研究(調査開始後に生じた事柄を追跡する研究)で示された。

 

アポC-Ⅲの有無でリスクを比較

 サックスらは「看護師健康調査」に参加した女性572人と「医療従事者追跡調査」に参加した男性699人から採取した血液試料を調べた。これらは男女の健康に影響する因子を長期的に調べた最大級の調査だ。そして10~14年間に及ぶ追跡調査を行い,634例の冠動脈性心疾患を特定したうえで,年齢と喫煙状況,採血日が一致する対照群と比較した。

 

 その他の生活習慣による心血管リスク因子も考慮に入れて補正した結果,アポC-ⅢつきHDLによって冠動脈性心疾患のリスクが2倍近くになることがわかった。アポC-ⅢつきHDLの値が上位20%に入った男女は,下位20%に入った人たちよりも心疾患を発症するリスクが60%高かった。(続く)

 

続きは現在発売中の11月号誌面でどうぞ。

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