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“ヒ素細菌”は幻だった?〜日経サイエンス2012年9月号より

米国とスイスの2チームがNASA報告を検証

 

 米国とスイスの2つの国際研究チームは,元素のリンがなくても生きる細菌がいるとの米航空宇宙局(NASA)などによる2010年の報告は間違いだとする論文を7月8日付のScience誌電子版に発表した。

 NASAの研究はリンの代わりにヒ素を使って遺伝子の元となるDNAを作る細菌がいるという内容で,2010年12月にScience誌に掲載された。リンのない天体でも生命が存在する可能性が考えられるとし,地球外生命体を巡る議論を呼んだ。リンはDNAだけでなく体の基本となるタンパク質を作るのにも欠かせない物質であり,その代わりに猛毒のヒ素を使うとはまさに「常識外れの生命体」だと,大きな反響があった。

 今回,NASAの研究を検証したのは,米プリンストン大学とカナダのブリティッシュコロンビア大学,米ハワード・ヒューズ医療研究所のチームと,スイス連邦工科大学チューリヒ校微生物学研究所のチーム。NASAが発見したという米カリフォルニア州のモノ湖にすむ「GFAJ-1」という細菌を調べた。

 モノ湖は湖から流れ出す川がなく,塩分濃度が海水の3倍ほどもあるうえに,アルカリ性が強く,猛毒のヒ素を豊富に含む。とても通常の生物は生きられない過酷な環境だ。この湖にすむ細菌のDNAのリン酸がヒ素に置き換わって増殖したというのが,NASAの当時の報告だった。

 ところが今回の研究では,米・カナダチームが「この細菌はヒ素が多くてリンが少ししかない環境でも育つことはできるが,リンがまったくない場合はリンの代わりにヒ素を使って生きることはできなかった」と結論づけた。部分的にリン酸塩の代わりにヒ酸塩を取り込むことはあったが,代用にはなりえないと指摘した。

 スイスチームも「リンがなければ生命活動の維持と成長ができない」と発表した。猛毒のヒ素に耐えることはできるが,ヒ素だけでは生きられないという。(続く)

 

続きは現在発売中の9月号誌面でどうぞ。

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