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シラミが語る真実〜日経サイエンス2012年8月号より

キツネザルの行動をシラミで追跡

 

 ネズミキツネザルは体重がたったの40gで,世界最小クラスの霊長類だ。小さいうえに夜行性で,木にすんでいるため,追跡や観察が難しい。ヘルシンキ大学の大学院生ゾーディ(Sarah Zohdy)らは,この小型のキツネザルの相互関係を調べる巧妙な方法を思いついた。この動物についているシラミを追うのだ。

 シラミは1億3000万年以上前に出現し,当時は羽毛恐竜についていたと考えられているが,現在ではほぼすべての鳥類と哺乳類に寄生している。シラミは宿主特異的で,宿主は単一の生物種か,ごく近縁の生物種グループに限られる傾向にある。また,シラミが繁殖して広がるには,宿主どうしが互いに体を密着させなければならない(多くの親が知っているように,幼稚園の教室で子供たちが接触するような状況が必要)。野生動物に寄生したシラミの場合,宿主動物どうしが取っ組み合いや交尾をしたり,同じ巣にすんだりして物理的に接触しない限り,宿主を乗り換えることはまずない。

 

シラミにマニキュア

 ゾーディらはマダガスカルのキツネザルの行動をトラップを使って調べていた。キツネザルに特異的に寄生するレムールペディキュルス・ヴェルキュロサス(Lemurpediculus verruculosus)というシラミに,マニキュアを使って固有の色コードで印をつけた。研究チームは長い時間をかけて,キツネザルを捕獲しては印をつけたシラミが宿主を変えたかどうかを調べた。

 その結果,繁殖期の1カ月間でオス14匹の間で76例の宿主替えが記録された。オスの間だけで起こったこの宿主替えは,メスをめぐる取っ組み合いの喧嘩の間に起きた可能性が高いと研究チームは考えている。だがさらに興味深いのは,トラップ法では予想できなかった13例の新たな社会的交流がシラミのデータから見つかったことだ。例えばキツネザルの行動範囲が従来考えられていたよりも広いことがわかった。一部のシラミは,600m以上離れたトラップにかかったキツネザルの間で移動していたのだ。

 シラミを使った研究はこれが初めてではないが,生きた野生動物の行動調査に利用したのは初のケースだろう。ゾーディらは自分たちの仕事がこの手法の有用性の証明になることを願っている。

 

この記事はSCIENTIFIC AMERICANのウェブサイトにあるブログ「サイエンス・スシ」(blogs.ScientificAmerican.com/science-sushi)より。

 

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