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超光速ニュートリノ“事件”に幕〜日経サイエンス2012年8月号より

素粒子ニュートリノが光より速く飛ぶとの実験結果は世間を驚かせた

しかし実験に不備が見つかり,再実験で超光速ではないことがわかった

 

 昨年9月の「超光速ニュートリノ」の発表は科学ニュースの枠を越え,世間の耳目を集める事件となった。新聞には「タイムマシンも夢ではない?」という見出しが躍った。だが,その後,実験装置を詳しく調べたところ不備が判明,再実験でニュートリノは超光速ではないことが確かめられた。別グループによる検証実験でも同じ結果が出て,6月上旬,京都市で開かれた第25回ニュートリノ・宇宙物理国際会議で発表された。世紀の実験のどこに落とし穴があったのか,どのようにして事件に幕が下ろされたのか報告する。

 

サブテーマの実験

 欧州を舞台にした今回の「OPERA実験」はそもそもニュートリノの速度計測が主目的ではない。14年前,岐阜県奥飛騨山中の地下にある東京大学の実験施設「スーパーカミオカンデ」で発見された「ニュートリノ振動」という現象を,これまでとは別のアプローチで調べるのがメインテーマだ。

 ニュートリノ振動は,ある種類のニュートリノが飛行中に別種のニュートリノに変身する現象。ニュートリノには電子型,ミュー型,タウ型の3種類あり,ニュートリノ振動によって例えば電子型はミュー型,タウ型へとそれぞれ変身する(ただし変身のしやすさは異なる)。ニュートリノ振動の発見は,質量ゼロとされていたニュートリノが質量を持つことを意味する。現在の素粒子論の枠組みに見直しを迫る大発見で,各国の研究グループが様々なアプローチでニュートリノ振動を詳しく調べている。中でも難度が高いのがミュー型が変身してできたタウ型を検出する実験だ。

 この実験を行うには,まず高エネルギーのミュー型を多数作る必要があるので,かなり大型の加速器を用意しなければならない。検出器にも高度な技術が求められる。ニュートリノのほとんどはミュー型のままで,変身したタウ型は数千個に1個。さらにニュートリノを遙かに上回る様々な別種の粒子も検出器に入って来る。タウ型ニュートリノをキャッチするのは砂漠で1粒の砂金を探すのに等しい。(続く)

 

続きは現在発売中の8月号誌面でどうぞ。

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