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「測れる」って何?〜日経サイエンス2012年7月号より

「存在する」と「見える」の間のギャップは意外に大きい

 

我々は世界をどこまで知り得るか。かつてハイゼンベルク(Werner Heisenberg)が提起した古くて新しい問題が,再び議論になっている。焦点は2つだ。ひとつは我々は位置や運動量などの物理的量を「どこまで」正確に知り得るかという測定の限界の問題(「『誤差』って何?」2012年6月号)。そしてもうひとつは我々は測定によって「何を」知り得るのかという,測定の可能性の問題だ。

 

あるけど見えない

 世の中には,「確実にそこにあるが,決して見ることができない」ものが存在する。例えば電子波の位相だ。電子が波でもあることは,日立製作所の外村彰フェローが観測したアハラノフ・ボーム効果など数々の実験からわかっている。では電子の波をとらえて「今,電子波の山が来た」「谷が来た」と検知することはできるだろうか? 実はできない。電子波の位相(波の形)を測ることは不可能なのだ。

 奇妙に思う人もいるだろう。携帯電話はアンテナで電波をキャッチし,その形から情報を得ている。だが電波は光子が作る電磁波の一種で,電子が作る電子波とは違う。電子波の位相は測れないが,電磁波の位相は測れる。

 なぜこんな違いが生じるのだろうか。「電子の電荷が保存するから」だと,名古屋大学の谷村省吾教授は指摘する。電子は決まった大きさの負の電荷を持ち,はがしたり付け加えたりすることはできない。そして電子の電荷を変えずに,電子波の位相を測る方法は存在しない。一方,光子には電荷がないしほかに光子単独で保存される量もなく,電磁波の位相測定は邪魔されない。

 何が測れて,何が測れないのか。谷村教授は「測定可能」とは何かを物理の言葉で定義し,測定の可否を分けるカギが保存則にあることを,量子力学理論から示した。(続く)

 

続きは現在発売中の7月号誌面でどうぞ

再録:別冊日経サイエンス199「量子の逆説」

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