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無痛分娩のリスク〜日経サイエンス2012年7月号より

硬膜外麻酔をすると分娩中に発熱し,赤ちゃんに危険が及ぶことも

 

 妊婦にとって,出産時の苦痛にどう対処するかは重大な問題だ。米国の場合,妊婦の60%以上が硬膜外麻酔による無痛分娩を選択する。局所麻酔とともに,脊髄を取り囲む硬膜外腔という部分に麻酔薬を投与する方法だ。ほとんどの医師はこの処置が安全だと考えているが,最近の研究から,分娩中に発熱するリスクが高くなり,この結果,まれではあるが生まれてくる赤ん坊に危険が及ぶ可能性が示唆された。

 硬膜外麻酔はかねて議論の的になってきた。この処置を望んだ妊婦は緊急帝王切開になる可能性が高まるとする研究結果があったが,2011年に発表された総説では,硬膜外麻酔に伴う帝王切開のリスクは他の陣痛緩和法に比べて高くはないとされた。しかし,その同じ総説が,硬膜外麻酔を使った場合に鉗子や吸引による分娩が増える傾向を明らかにした。

 

20%近くが発熱

 その後,妊婦が決断にあたって考慮すべき新たな発見が加わった。ハーバード大学医学部と公衆衛生学部の研究チームが2月のPediatrics誌に,第1子を出産した低リスク妊娠者3209人を追跡した結果を発表した。それによると,硬膜外麻酔を受けた女性の5人に1人近くが分娩中に38℃以上の熱を出し,他の薬を使うか陣痛緩和処置を取らなかった女性の発熱が2.4%だったのに比べて大きな違いが見られた。母親の熱が高いほど,赤ん坊の誕生後のアプガー指数(新生児の全体的な健康状態を示す指標)は低く,筋肉の正常な緊張状態が損なわれ,呼吸困難が認められる割合が高かった。

 さらに,新生児がけいれんを起こす割合は全体では1.3%にすぎないのに,硬膜外麻酔をして38℃以上の熱を出した妊婦から生まれた赤ん坊の場合は8.3%で,発熱しなかった妊婦の場合の6倍以上だった。硬膜外麻酔に伴ってなぜ発熱するのかは不明だが,総説の主執筆者であるハーバード大学公衆衛生学部の生物学者で産科医のリーバーマン(Ellice Lieberman)は,この麻酔薬が炎症反応を引き起こすのではないかと考えている。(続く)

 

続きは現在発売中の7月号誌面でどうぞ。

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