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超対称性は死んだのか?〜日経サイエンス2012年7月号より

統一理論の足がかりとして期待が高いが,LHCではまだその片鱗も見つかっていない

 

 物理学者は数十年前から「超対称性」について熟慮を重ねてきた。素粒子にもう1つの“影の世界”が存在するという考え方で,宇宙の暗黒物質(ダークマター)の正体など,素粒子物理学の「標準モデル」では説明できない謎を見事に解き明かしてくれるはずだ。

 ところが最近,一部の物理学者は超対称性を疑い始めた。史上最強の加速器である大型ハドロン衝突型加速器LHCによる実験で,未知の実在を示すような新現象がこれまで何も見つかっていないからだ。新現象の探索が始まったばかりだとはいえ,超対称性が存在しない場合の物理学を検討せざるをえなくなっている。

 

兆候なし

 「どこを見ても,何も見つからない。標準モデルから乖離した現象が何も見つからないのだ」。そう話すのは,イタリアのパヴィアにある国立核物理学研究所のポールセロー(Giacomo Polesello)だ。彼はLHCに2つある大型多目的検出器の1つATLASを建設・運用している3000人強の国際共同チームの主要メンバーだ。もう1つの大型検出器CMSのチームも,標準モデルから外れた現象は何も見つかっていないと3月にイタリアのアルプス地方で開かれた会議で報告した。

 

 理論家たちが超対称性の概念を導入したのは1960年代で,素粒子の2つの基本タイプ,「フェルミ粒子」と「ボース粒子」を関連づけるのが目的だった。大雑把にいうと,フェルミ粒子は物質を構成する粒子(典型例は電子)で,ボース粒子は力を媒介する粒子(電磁気力の場合なら光子)だ。超対称性は,すべてのボース粒子に質量の大きな“スーパーパートナー”としてのフェルミ粒子が存在し,同様にすべてのフェルミ粒子にはボース粒子のパートナーがあると考える。「一段高いところから世界をとらえることで,すべてが対称で美しい究極の世界像が出現する」と米国立SLAC加速器研究所の理論家ペスキン(Michael Peskin)はいう。

 

 スイスのジュネーブ近郊にある欧州合同原子核研究機構(CERN)の大型加速器LHCはそうした超対称性粒子を生じるのに十分なエネルギーを持っているはずだった。しかし,高い期待(とエネルギー)に反して,これまでのところ自然は味方してくれていない。未知の新粒子の兆候は1件も見つかっていないのだ。超対称性粒子が存在するとしても,多くの物理学者がこれまで期待していたよりもずっと重いことになる。(続く)

 

続きは現在発売中の7月号誌面でどうぞ。

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