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系外惑星の軌道に肉薄〜日経サイエンス2005年12月号より

東大グループが見えない惑星の運動を割り出した

 

 惑星を従えている星は太陽だけではない。すでに160個以上の太陽系外惑星が見つかっている。ただし地球から遠く離れているため,その姿を直接に見るのはいまのところ不可能。中心の星のわずかな動きや光量の変化から,間接的に存在が確かめられてきた。
 それでも工夫しだいでは系外惑星についてさまざまな事柄がわかる。東京大学大学院理学系研究科の須藤靖(すとう・やすし)助教授らのグループは,ある系外惑星の公転軸が中心星の自転軸に対して4.4度ほど傾いている(惑星の公転面が中心星の赤道面に対して同じだけ傾いている)ことを突き止めた。系外惑星の軌道の傾きを精密に検出したのは今回が初めて。しかし,どうしたらこんな詳しいことまでわかるのだろうか?

 

中心星の“色”に着目

 研究対象として選ばれたのは地球から約150光年離れた「HD209458」という惑星系だ。木星の0.63倍の質量を持つ惑星が,中心星の周りを3.5日周期で公転している。惑星そのものは見えないが,中心星の前を周期的に横切るため,この際の光量の変化から惑星の大きさなどが推定されてきた。
 今回の解析でカギとなったのは中心星の“色”の変化だ。惑星が中心星の前を横切ると光のスペクトルの波長がわずかにずれる現象で,「ロシター効果」と呼ばれている。ここからなぜ惑星の軌道に関する事柄がわかるのか,少し説明が必要だろう。
 中心星は自転していて,地球から見ると星の半分(例えば左側)は近づき,もう半分(右側)は遠ざかっている。近づいてくる半球からの光はドップラー効果によって波長が短くなり,遠ざかる半球からの光は長波長側にずれる。通常はこれらを合わせた光が見えている。
 ここで惑星が中心星の左側から横切り始めると,地球に近づいている半球からの光が遮られて,全体としては長波長側にずれて見える。惑星が中央を過ぎて反対側に入ると,今度は短波長側にずれる。惑星の公転運動が中心星の自転と逆向きなら,同様の現象が逆の順序で起こる。また,惑星が中心星の前を真っすぐ横切るか斜めに横切るかによって,変化の様子が変わる。これをもとに解析すれば,惑星の動きがわかるのだ。
東京大学のグループはハーバード大学のウィン博士(Josh Winn)らと共同でケック天文台やハッブル宇宙望遠鏡などの観測データを詳しく解析し,問題の系外惑星の公転軸の傾きを「4.4±1.4度」と弾き出した。

 

惑星系の起源に迫る

 太陽系は回転する塵の円盤から生まれたと考えられており,このモデルでは中心星の自転軸と惑星の公転軸はほぼ平行となる(地球の公転軸と太陽の自転軸のずれは約7度)。今回の結果は太陽系以外の起源も同様のモデルで説明できることを示している。今後は,惑星の軌道がなぜ数度の傾きを持つのか,踏み込んだ研究が進みそうだ。
この成果はThe Astrophysical Journal誌10月1日号に掲載されたほか,日本天文学会秋季年会でも発表された。

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