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次世代超音速機の実験成功〜日経サイエンス2006年1月号より

新設計手法で機体の抵抗を抑制した

 

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)はこのほど,次世代超音速機(SST)の開発に向けた実験に成功した。オーストラリア南部のウーメラ実験場から全長11.5m,重さ2トンの無人実験機をロケットで打ち上げて高度約18kmで分離,滑空飛行させた。総飛行時間約15分の間にマッハ1.9~2を記録,JAXAの坂田公夫理事は「日本の航空機設計の底力を示した」と胸を張る。

 

 これはJAXAが長期目標として掲げている「超音速旅客機の開発」の一環。2002年7月に1回目の実験を試みたが,ロケットから実験機が落下して失敗していた。
今回の実験機の特徴は,あらかじめスーパーコンピューターで機体の周囲の空気の流れや抵抗を計算し,これに基づいて最適な形状を設計する「CFD(計算流体力学)逆問題設計法」を採用した点。日本が世界に先駆けて試みた新しい設計手法だ。
現在の旅客機はおおまかな機体形状を決めてから風洞実験や理論計算によって性能を求め,機体の設計を詰めていく順問題設計を採用しているため,修正や誤差が大きく,開発コストを引き上げている。

 

 今回の機体設計で特に力を入れたのは「自然層流翼」の実現。飛行中に主翼の表面付近に生じる流れの乱れをできるだけ小さくして,層流に近い状態を維持することで,摩擦抵抗を小さくする。現在の旅客機では主翼の表面全部が乱流状態となっており,これが燃費の悪さにつながっている。
開発チームは主翼にかかる圧力分布を事前に計算し,全面にわたって層流が維持できるように形状を設計した。その結果,コンコルドに比べて抵抗を10%以上抑えられたという。

 

 超音速旅客機は1976年にコンコルドの商業運航が始まったものの,燃費の悪さや騒音などが原因で2003年に終了した。新たな超音速機の開発も縮小傾向にあったが,潜在需要に対する期待は根強く,ここ数年で盛り返しの兆しを見せている。ただし国際共同開発が前提となる。

 

 日本は旅客機開発で出遅れており,設計の初期段階から国際的に主要な役割を果たした経験はない。JAXAは新設計法に期待をかけている。

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