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いじめで遺伝子発現が変化〜日経サイエンス2006年6月号より

 いじめの恐怖の根底にある遺伝子が齧歯(げっし)類で見つかった。大きなマウスからいつも脅かされているマウスは孤独になり,よりおとなしいマウスまで恐れるようになる。いじめられることによって,いわゆる「中脳辺縁系ドーパミン経路」での遺伝子発現が大きく変わるようだ。この経路は快い刺激や欲望の感情と関連している。

 

 いじめられたマウスでは,同経路で309個の遺伝子の発現が増え,17個の発現が抑えられた。これらの変化の多くは数週間にわたって続いた。同経路の主な調整役は脳でできる神経栄養因子で,これは抗うつ作用に関連する化学物質だ。

 

 テキサス大学サウスウエスタン医療センターのバートン(Olivier Berton)らは,同経路で神経栄養因子ができないようにマウスの遺伝子を操作し,いじめによって起こる遺伝子発現の変化を通常とは逆転させた。するとマウスは繰り返し苦しめられているにもかかわらず他のマウスを受け入れるようになった。

 

 これらの研究結果は,うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療に役立つ可能性がある。Science誌2月10日号に掲載。

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